IoTに備えよ~“モノのインターネット”の課題と可能性~

 モノのインターネット(Internet of Things)」という言葉は、1999年にケビン・アシュトン氏*1によって考案された。その後この考え方は進化し、今では「IoT」と略記されることも多い。21世紀の現在では、「インテリジェントなデバイスがエンタープライズ・アプリケーションと通信するという点がIoTの重要なポイントです」と、オラクル・コーポレーションのハリシュ・ガウアーは説明する。こうしたデバイスとの通信によって、企業は驚くほど膨大かつ多種多様なデータを収集できるようになる。これらのデータは、新しいかたちで人類のニーズを満たすという面でも、驚くほど大きな価値を秘めている。

 だが、IoTのプロジェクトに乗り出すうえで、検討すべき重要なことがいくつかある。その1つが、デバイス間通信の標準プロトコルが定まっていないという点だ。「デバイス間通信、メッセージング・プロトコル、アプリケーション開発フレームワーク、参照モデルなどの標準規格が乱立しています」とガウアーはいう。

 インターネットの黎明期と同じように、デバイス間通信に必要な標準規格は、IT業界から生まれる可能性がきわめて高い。「IT業界は、標準やプロトコルがない部分について、常に新たな解決策を編み出してきました」と、ケイネックス・テクノロジーのCTO(最高技術責任者)でOracle ACE Director*2のバッシャー・カーン氏は話す。IoTの通信規格に関する問題もまた、過去の話になると同氏は予測する。

 通信プロトコルに関する問題の解決がIoT発展の後押しになるのは確実で、先行きへの期待が高まる。そうした障壁がなくなると、あらゆるモノからデータセンターに情報が送られ始め、データ量はとてつもない規模で増えていくことになる。現在の「ビッグデータ」という考え方は、モバイルデバイスのデータストリームから生まれた。IoTからのデータストリームが加わると、この“ビッグ”という定義を大幅に修正する必要が生じるだろう。

「企業に押し寄せるデータの量やスピードという面では、
モバイル・コンピューティングは氷山の一角に過ぎません」

オラクル・コーポレーション
Oracle Fusion Middleware製品管理ディレクター
ハリシュ・ガウアー

 「企業に押し寄せるデータの量やスピードという面では、モバイル・コンピューティングは氷山の一角に過ぎません。モバイルデバイスの数は本質的に人口との相関性がありますが、IoTデバイスの数はその10倍や100倍に及ぶ可能性があります」とガウアーはいう。携帯電話やタブレット端末が生成するのも確かにデータストリームだが、キッチンにあるすべての器具からデータストリームが生成されるようになったら、どうなってしまうのだろうか。

 「データの取得、分析、処理をどのようにおこなうかは、IoTの進化において大きな意味をもちます。この問題を解決するうえでは、イベントドリブン型のアーキテクチャとビッグデータが重要な技術になります」と、オラクル・コーポレーションのアンブ・クリシュナスワミーはいう。

 もう1つの問題は、IoTの膨大なデータストリームを選別し、意味のあるデータを見つけ出すという部分だ。「IoTのデバイスが数十億という規模に拡大したとき、そこから本当に有益なデータを抜き出すのは簡単ではありません」とクリシュナスワミーはいう。IoTの時代には、ビジネス・アナリティクス・ツールの重要性がますます高まる。

 こうした難題はあるものの、企業は果敢に有効なIoTソリューションの開発に挑んでいる。2013年9月に開催されたOracle OpenWorldで、IoTソリューションを手がける2人のアーキテクトに話を聞いた。1人は、ベライゾン・テレマティクスのシニア・バイスプレジデントでチーフ・テクニカル・アーキテクトのマイク・バドニー氏だ。同社はIoTに関して、自動車のテレマティクス・システムを手がけており、保険会社向けに、車の状態やドライバーの運転状況などのデータをリアルタイムで取得し、転送している。現在このシステムでは、10万のデバイスが1日に120万件のメッセージを生成しているという。もう1人は、ブラジルの企業サスカーで、システム開発とビジネスソリューションのマネジャーを務めているクリスティアン・サイモンズ氏だ。同社のIoTソリューションには、組織犯罪に対抗するための盗難車発見システムがあるという。これらは実際に稼動し成功を収めているが、こうした初期の成功事例がほかにもあることに鑑みても、IoTには新たなイノベーションの可能性が広がっていることがわかる。この状況を、ただ見ているだけというわけにはいかないはずだ。

*1 マサチューセッツ工科大学でRFIDの研究開発プロジェクトであるオートIDセンターを設立した人物の1人
*2 オラクルの技術者コミュニティを熱心にサポートする方をコミュニティの推薦に基づいてOracle ACE、Oracle ACE Directorとして認定するプログラム

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