【大和ハウス工業】情報系システムのデータベース基盤を刷新し 最大241倍のバッチ処理性能の向上を達成


情報系システムのデータベース基盤を刷新し最大241倍のバッチ処理性能の向上を達成

大和ハウス工業株式会社(以下、大和ハウス工業)は、複数の情報系システムの機能を統合した大規模業務アプリケーションをプライベートクラウド環境上で運用していたが、月末・月初や期末の処理負荷が高まる時期にシステムの性能が劣化、場合によってはシステムダウンするという問題を抱えていた。そこで同社は、システム更改を機にデータベース基盤をOracle Exadata Database Machine(以下、Oracle Exadata)に入れ替え、システムのボトルネック解消を図った。その結果、システムの性能と安定性の向上とともに、業務効率化の効果もあわせて手に入れた。

 日本を代表する総合住宅メーカーの1社、大和ハウス工業。同社では、これまでプレハブ建築や住宅CADなど、建設・住宅業界に新風を招き入れる新たなチャレンジに常に取り組んできた。そうした社風は同社のIT施策にも及んでおり、2008年には自社システムのクラウド化を着々と進めてきた。

 現在、同社の業務システムのほぼすべてがプライベートクラウド環境上で稼動しているが、そのなかでももっとも幅広い業務をカバーするシステムの性能が徐々に低下し、とくに月末・月初や期末など処理が集中する時期の業務に悪影響を及ぼすようになっていた。

 そこで同社が取った対策が、データベース基盤をそっくりそのままOracle Exadataに入れ替えることで、ボトルネックを根本的に解決してしまうというものだった。チャレンジ精神旺盛な同社ならではのこの大胆なインフラ刷新は見事に功を奏し、システムのスループットやバッチ処理の性能は、桁違いの向上を見せたという。

情報系システムの性能劣化が目立つように

 大和ハウス工業はこれまで、建設・住宅業界をリードする斬新なITの取組みを率先して進めてきた。たとえば業界初の住宅用CADソフトの開発や、独自の管理会計の仕組みを実装した会計システムの開発、Mac端末の大量導入などが代表的な例だが、2008年から進めてきたプライベートクラウドへの取組みもその1つだ。同社 執行役員 情報システム部長 加藤 恭滋氏は、その経緯について次のように説明する。


大和ハウス工業株式会社
執行役員
情報システム部長
加藤 恭滋

 「2008年、社内データを集中管理するシステムのリプレースにあたり、それまで自社で運用していたインフラをアウトソースする運用に切り替えたのがクラウド移行の始まりでした。これによって、より確実なデータ保全を図るとともに、それまでインフラのお守りに忙殺されてきた社内要員を解放し、より付加価値の高い仕事に集中させることが狙いでした」。

 まだ、クラウドという言葉が一般的ではなかった当時、同社は率先して自社システムのクラウド移行を進め、現在では基幹システムも含めて多数のシステムを、独立系SIerである伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)が運営するプライベートクラウド環境上で稼動させている。

 CTCは、大和ハウス工業がプライベートクラウドに乗り出す前の2005年に業務システム「D-SMART」の開発を担当して以降、大和ハウス工業のシステム開発・運用に深く携わってきた。D-SMARTは一からスクラッチ開発されたシステムで、社内のグループウェアとワークフロー、SFAといった各種情報系システムの機能をすべて盛り込み、同社の業務形態に最適化したもの。社内システムのプライベートクラウド化にともない、このD-SMARTも2010年からクラウド基盤上で稼動している。

 当初、何の問題もなくスムーズに稼動していたD-SMARTだったが、徐々にパフォーマンス面で問題が生じてきたという。

 「D-SMARTは顧客管理から契約管理、日報の管理や予定表機能、請求書の処理、交通費や出張費の精算など、日々の業務で必要なありとあらゆる機能を担っていました。それだけに、月末・月初や期末になると、アクセスが一斉に集中してパフォーマンスが劣化することがままあり、決算処理が遅れてしまう恐れまで出てきたため、これは何とかしないといけないと考えていました」(加藤氏)。

 当時は月末・月初、あるいは期末ごとにシステムの性能劣化やダウンのクレーム電話が多く寄せられ、ITシステム部門はその対応に追われる毎日だったという。

データベース基盤をOracle Exadataに入れ替えて根本解決を図る

 そこで同社情報システム部のメンバーやCTCのSEがパフォーマンス劣化の原因を調査したところ、一部のクエリ処理の性能がきわめて劣化していることが判明した。月末・月初、そして期末には、それに加えてデータ分析のためにデータベースからデータを取得する処理もこの時期に多く流れていた。そうしたデータ取得のバッチ処理によって、よりいっそうデータベースに負荷がかかっていたのだ。

 もちろん、アプリケーションのチューニングなどによって、ある程度のパフォーマンス改善はおこなっていたという。しかし、同社 情報システム部 情報技術管理グループ グループ長 櫻井 直樹氏によれば、それにも明らかに限界があったという。


大和ハウス工業株式会社
情報システム部
情報技術管理グループ グループ長
櫻井 直樹

 「CTCとともに、アプリケーションの改修やクエリの見直しなどをおこないましたが、ある問題が片づくとまた別の問題が顔を出すという状態だったので、何とか根本から対策を打ちたいと考えていました」。

 同社が白羽の矢を立てたのが、オラクルのOracle Exadataだった。じつは同社では、すでに2012年8月にOracle Exadata X2-3を導入していた。そこで、2013年8月リプレースを機に、こちらのデータベース基盤もOracle Exadataに入れ替え、データベース・パフォーマンスにまつわる問題を一気に解決しようと図ったのだ。

 2013年5月、D-SMARTのデータベース基盤刷新プロジェクトがスタートした。導入するのは、最新バージョンのOracle Exadata X3-2。まずは、この上で既存のアプリケーションが正常に動作するか、パフォーマンス上の問題が生じないか、事前検証がおこなわれた。この作業にあたった、同社 情報システム部 営業系ソリューショングループ グループ長 渡部 信夫氏によれば、「アプリケーションの互換性」が最大の懸念点だったが、結果的にはアプリケーションはほぼ手を加える必要がなかったという。


大和ハウス工業株式会社
情報システム部
営業系ソリューショングループ
グループ長
渡部 信夫

 「もともと、D-SMARTはOracle 11g上で動作しており、いわば11gから11gへの入替えだったので、アプリケーションを改変する必要がありませんでした。また、事前にオラクルの方からも『アプリケーションの改修は一切必要ない』と聞いていましたので、その点でも安心感がありました」。

バッチ処理が最大で241倍もの性能向上を達成

 データベースにOracle Exadataを採用したことによる性能向上は、事前検証段階から早くも如実に表れた。検証段階では、それまで月末・月初にシステム・パフォーマンスの足を引っ張ることが多かった分析データ取得のクエリの1つが、従来比で何と3,000倍もの性能向上を見せたという。また、やはりそれまで月末・月初に処理時間が延びていた各種のバッチ処理も、本番環境とほぼ同じデータを使って検証してみたところ、やはり大幅な時間短縮を記録した。

 さらには、SIerとして全面的に設計、および実装作業を担当したCTCによる的確な作業やアドバイスの甲斐もあり、データベース移行プロジェクトはトラブルらしいトラブルもないまま進み、2013年8月、無事本番環境のデータベース基盤をOracle Exadataに切り替えた。

 D-SMARTはOracle Exadataのデータベース基盤上で安定して稼動を続けている。加藤氏は、これによるパフォーマンス向上の成果には目覚ましいものがあると評価する。

 「Oracle Exadataに切り替えて以降、2013年9月と12月に四半期決算がありましたが、システムのパフォーマンス劣化や停止といった問題は一切なくなりました」。

 実際に、どれほどのパフォーマンス向上が達成できているか、本番環境で計測してみたところ、なかにはそれまですべて処理し終わるまで1時間20分かかっていた日次バッチジョブの性能が241倍にまで向上し、わずか20秒で完了している例もあった。そのほかのバッチジョブも程度の差はあれおおむね性能向上を果たしているほか、分析データ取得のためのアドホッククエリや、オンライン問合せの処理も軒並み大幅に向上していることがわかった。加藤氏によれば、「すべてを平均すると、約3倍の性能向上を果たしたと見ています」という。

 また、データベース・パフォーマンスにまつわるトラブルが一切なくなったことにより、情報システム部の仕事のやり方にも大きな変化が生まれつつあると櫻井氏は述べる。

 「それまでは、月末・月初や期末にはシステムのトラブル対応に備えて、ほかの業務をあえて入れずに、いつでも対応できるよう待機の態勢を取っていました。しかしOracle Exadataを導入してからは、そうしたトラブルが一切なくなったため待機する必要がなくなり、本来注力すべき業務に集中できるようになりました。CTCにも従来は待機いただいていましたがそれもなくなり、全体的に業務の生産性が大幅に向上してきていると感じます」。

 また加藤氏は、業務部門にとってもさまざまな好影響があったはずだと指摘する。

 「それまで、月末・月初や期末の繁忙期にシステムが止まってしまうと、業務が大幅に滞ることもあったはずです。とくに決算業務は絶対に遅らせることができないだけに、D-SMARTのパフォーマンス劣化やダウンの影響は大きかったと思います。そうしたことが一切なくなったことで、経理部門の決算業務をスムーズに運べるようになったのはきわめて大きな成果でした」。

今後は蓄積された顧客情報のビッグデータ分析も視野に

 同社では、今後D-SMARTという情報系システムの中核を担うシステムのデータベース基盤にOracle Exadataが導入されたことで、それまで同システムに蓄積されてきたデータのさらなる活用が進むのではないかと期待しているという。

 「D-SMART上には膨大な量の顧客情報が保管されていますので、これにビッグデータ分析を施すことで、お客様のライフステージごとにタイムリーな提案をできるようになるのではないかと考えています。これをおこなううえで、Oracle Exadataの大量・高速処理技術は大いに役立つのではないでしょうか」。

 加藤氏は今後も、オラクルのデータベース技術の進化には大いに期待していると述べる。

 「ビッグデータ分析を大量・高速におこなうにはインメモリ処理技術が有効ですが、そういう意味でも今後Oracle Exadataに搭載されるインメモリ技術には着目しています。オラクルが垂直統合戦略を打ち出した当初は、その意図が見えにくくて不安に思ったこともありましたが、こうしてOracle Exadataを実際に使ってみると、ハードウェア技術とデータベース技術のシナジー効果がじつにうまく発揮されていて、とても素晴らしいと思います。今後はいいものをさらに安く、早く提供していただけると期待しています」。

P R O F I L E

大和ハウス工業株式会社
業  種:建設業
従業員数:1万4,380人(2014年4月1日現在)
資本金 :1,616億9,920万1,496円(2013年8月19日現在)
売上高 :2兆7,003億円(2014年3月期 連結)
おもな事業内容:1955年に「建築の工業化」を企業理念に創業した、大阪府大阪市と東京都千代田区に本社を置く国内最大手の住宅総合メーカー。「プレハブ住宅」と呼ばれる工業化住宅のパイオニアとして、半世紀にわたって、家づくりの技術やノウハウを磨いてきた。現在は住宅に加え、賃貸住宅、分譲マンション、商業施設、一般建築物、環境エネルギーなど、幅広い事業展開を進めている。

本事例の内容は2014年4月のものです

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