Oracle CloudWorld Tokyo 2015 Review
~モダナイズされたクラウドの活用こそが時代を勝ち抜いていくための変革のカギ~

2015年4月9日、10日の両日、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」が開催された。会期中は、SaaS、PaaS、IaaSといったパブリッククラウドやプライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなど、すべてのクラウド領域におけるオラクルのソリューションを紹介。各分野の顧客の成功事例も含め、約120のセッションが実施された。「デジタル・ディスラプション」による新産業革命の時代を迎えるなか、企業が勝ち抜いていくうえで不可欠となるクラウド技術の活用に向けたヒントをイベント参加者に提示した。

Oracle CloudWorld Tokyo 2015
~デジタル・ディスラプションによる新産業革命の幕開け~
Modern Business in the Cloud
会  期:2015年4月9日(木)・10日(金)
会  場:東京国際フォーラム

圧倒的なポートフォリオによるクラウドの提供でビジネスを支援


日本オラクル株式会社
取締役 代表執行役社長 兼 CEO
杉原 博茂

 日本国内のビジネスのスタートから今年の秋に30周年を迎える日本オラクルが、クラウド領域を軸に据えて顧客へのさらなる価値提供に向けた新たなチャレンジを鋭意推進している。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに、オラクルが「No.1クラウドカンパニー」となるべく、取り組みを強化しているところだ。

 そうしたなか実施された「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」は、会期2日間のオンラインでの参加も含めた事前登録者が2万名以上にのぼるという国内のIT関連のイベントとしては異例の規模で実施された。初日にイベントの開幕を告げる挨拶に立った日本オラクルの取締役 代表執行役社長 兼 CEOの杉原博茂は、「オラクルが持つ、アプリケーションからデータベース、Javaといったミドルウェア、さらにはハードウェアやOSといったインフラに至るすべての技術をクラウドに持って行く」と言明。「その圧倒的なポートフォリオを背景に、日本発でどのようなことができるのかを皆様にお見せしたいと思います」と今回のイベント開催に託した思いを熱く語った。


オラクル・コーポレーション
取締役会経営執行役会長 兼 CTO
ラリー・エリソン

 こうした同社の意気込みは、会期両日の基調講演に登壇したスピーカーの人選にも表れており、初日がオラクル・コーポレーションの創業者で、現在同社取締役会経営執行役会長 兼 CTOのラリー・エリソン、2日目はオラクル・コーポレーションのCEOであるマーク・ハードが、それぞれ務めた。これについて杉原は「米国以外の国で、ラリーとマークが同じイベントで登壇するのは日本だけです」と紹介した。

 ここでは、初日のエリソンによる基調講演、およびそれに引き続き、日本を代表するIT企業各社のトップの参集のもと実施された「Cloud Leadership Summit」の模様をレポートする。



オラクル・コーポレーション
CEO
マーク・ハード

 その前に、2日目にハードが実施した基調講演の概略にも触れておきたい。ハードはその講演のなかで、フォーチュン誌が米国企業の総収入に基づきランキングする「フォーチュン 500」の推移について言及。2000年にランクインしていた企業のうち現在すでに50%が圏外に去り、1990年だとその割合が実に70%にのぼるという。圏外に去った企業は時代の急激な変化に対応したITの活用を実践できていなかったことを指摘。「今日の顧客や従業員のダイナミズムに対応していくうえで、企業にはクラウドの活用が必須。オラクルは時代の要請に応えるモダナイズされたアプリケーションやプラットフォーム、インフラをクラウド上で提供し、企業のイノベーションに貢献していく」と力強く語った。


既存システムとは根本的に異なる“真の”クラウドアプリケーション

 初日の基調講演に登壇したエリソンからは、今日、ビジネスに求められるクラウドアプリケーションの真の姿とはどうあるべきか、それが企業にいかなるメリットをもたらすのか、そしてその提供に向けたオラクルの取り組みなどについての解説が行われた。

 講演の冒頭、エリソンは「企業が10年前、20年前に構築したアプリケーションを外部のデータセンター基盤上に移行して、インターネット経由で利用できるようにしたからといって、それがクラウドアプリケーションと呼べるでしょうか。クラウドとはその程度のものでしょうか。私はそうではないと思います」と切り出す。

 今日の企業に求められているのは、現在のビジネスニーズにマッチしたさまざまな機能を備えたモダンなアプリケーションであり、企業が以前から利用してきたアプリケーションそのものではないというわけだ。両者の違いについてエリソンは、オラクルがクラウド上で提供するHCM(Human Capital Management)アプリケーションを例にとって解説する。

 HCMアプリケーションとは、周知のとおり、社内の人材管理にかかわる仕組みを提供するものだが、そこで今日求められているのが、企業が採用すべき有能な人材を効果的に発掘することを支援する機能だ。「最近では、企業への就職を目指す人達の多くが、FacebookやTwitter、あるいはLinkedInといったソーシャルネットワークを活用しています。オラクルのHCMアプリケーションには、これらのサービスにアクセスして、有能な人材を探し出すための仕組みが用意されています」とエリソンは説明する。こうしたFacebookやTwitterといったソーシャルネットワークは10年前には存在せず、当然、当時開発されたHCMアプリケーションにこのような機能は実装されていない。

 また、オラクルのHCMアプリケーションには、それ自体のなかに社内向けソーシャルネットワークの機能を内包している。これについては、例えば各部門が新たなプロジェクトの立ち上げにより必要となった人材像について、人事部門と意見を交換したり、あるいは身近に求職中の有能な人材がいる従業員が、その旨を採用担当者に伝えたりといった利用が可能となる。要するに、人事部門や管理職だけではなく、全社的な利用を想定しているのがオラクルのHCMアプリケーションであり、写真やドキュメントなど、さまざまなデータを共有するための仕組みも装備されている。

直感的なUI、モバイル対応もモダンアプリケーションの要件

 加えて、重要なポイントとしてあげられるのが、オラクルのモダナイズされたクラウドアプリケーションは、従来システムのように業務処理系、BI(Business Intelligence)/データウェアハウス系に分散された構成ではなく、両者が統合されたかたちとなっている。

 「例えば人事が採用したい人材に対し、それに向けたオファーを出そうとする場合に、仮にその人材の採用により、増員にかかわる予算などを超過してしまうというようなことがあれば、その旨をシステムがアラートとして表示するといった機能も実装されています」とエリソンは紹介する。つまり、HCMアプリケーションとBIツールを行き来することなく、速やかな意思決定を行うことを支援しているわけだ。

 そのほかにも、オラクルのHCMアプリケーションには、FacebookやTwitterのようにマニュアル不要で直感的に使いこなせるユーザーインターフェイスが装備されていたり、人材の採用だけではなく、採用後の教育・トレーニングにかかわる支援機能やその後の現場への人材配備を支援する仕組みなど、人材管理にかかわるライフサイクルを総合的にサポートする機能が搭載されていたりする。また、PCだけでなく、タブレットやスマートフォンといったモバイルデバイスから利用するための仕組みなども標準で実装されている。

 言い換えれば、今日ビジネスで求められているモダンなクラウドアプリケーションの姿とはまさにこのようなものであるというわけだ。「それは10年前に開発されたアプリケーションとは根本的に異なるもので、既存システムを外部のデータセンターに移して、インターネット経由での利用を可能にしたからといって、そうした要件を満たし得るものではありません」とエリソンは重ねて強調する。

コンピューティングのユーティリティ化が進展する


 クラウドの活用はハードウェアの調達やソフトウェアの開発、あるいはシステムの運用から企業を解き放つものだ。そうした作業はすべてクラウドサービスを提供するITのプロであるプロバイダーが面倒を見てくれる。ユーザーはニーズに沿ったサービスを選択して利用するだけで、素早くビジネス上の要求を満たしていくことができる。システムの構築や運用に心を砕くことなく、コアのビジネス領域に専心できるというわけだ。

 このようにクラウドの世界では、コンピュータ利用が電気や水道、ガスといった他のインフラ同様にユーティリティ化される。「要するに、企業が求めるリソースや機能の提供にかかわる複雑性がユーザーには完全に隠蔽されることになるわけで、そうした意味ではクラウドビジネスは公益事業としての性質を帯びてくるといっていいでしょう」とエリソンはいう。

クラウド環境に最適化すべくアプリケーションを全面再構築

 オラクルでは、ここでHCMアプリケーションを例に紹介してきたSaaS(Software as a Service)、データベースやJavaからなるPaaS(Platform as a Service)、そしてハードウェア、OS、仮想環境で構成されるIaaS(Infrastructure as a Service)というクラウドを構成する3つのレイヤーすべてにかかわるサービスを提供している。

 そして、例えばSaaSに関していえば、売上規模で世界第2位を達成し、すでにNo.1をうかがうところにまできている。また、プラットフォーム領域に関しても世界の大手SaaSプロバイダーのトップ20のうち19社がオラクル製の基盤環境を活用している。

 「いま我々がアプリケーションやインフラの領域で覇を競っているのは、10年前にオンプレミスシステムの世界でしのぎを削ったライバル各社ではなく、クラウドの世界で台頭してきた新たなプレイヤーたちです」とエリソンは語る。つまり、この10年の間にコンピューティングの領域では、クラウドへの移行に関連して劇的な技術革新が進んだものといえる。「オラクルは、10年前の段階ですべてのアプリケーションをクラウドという新たな環境に適合するように再構築するという大きな決断を下し、着々と準備を進めてきたのです」とエリソン。オラクルが常に現状に甘んじることなく、積極果敢に新たな技術領域にチャレンジし続け、その結果、現在も10年前と変わらず、業界でトップ争いをし続ける位置にいることを強調した。

 2015年、オラクルは世界で20番目となる大規模なデータセンターを日本に開設する予定だ。そうしたインフラ面での拡充も図りながら、より安全で信頼性に優れ、かつ低コストなクラウドサービスの提供を目指していくことになる。「クラウドを積極的に活用する企業こそが、最終的に必ず“勝つ”。そう確信しています」とエリソンは力を込めて語る。

世界が直面する課題解消への貢献が今後のITソリューションの使命

 エリソンの講演に引き続き、日本を代表するIT企業4社のトップの参集を得て、「クラウドのトレンドが世界をどう変えるか?」というテーマについて議論するセッション「Cloud Leadership Summit」が実施された。

 その登壇者は、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) 代表取締役社長の菊地 哲氏、エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ) 代表取締役社長の岩本敏男氏、日本電気(NEC) 代表取締役で執行役員社長の遠藤信博氏、富士通 代表取締役社長の山本正已氏、そしてオラクル・コーポレーションのエリソンを加えたそうそうたる面々である。司会者として臨席した日本オラクルの杉原は「お集まりいただいた4社合計の売上は、日本のITサービス市場の35%を占めます」と会場に紹介した。

 セッションでは、ゲストとして登場した4社のトップがまず、いま世界が抱えるさまざまな課題の解消に向け自社がいかなるビジネス戦略を描いているか、そのなかでクラウドをどのように位置づけているかについて、順にプレゼンテーションを実施した。ここではその内容をかいつまんでレポートしたい。


株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
代表取締役社長
岩本 敏男氏

 最初にプレゼンを行ったNTTデータの岩本氏は、1980年にアルビン・トフラーがその著書『第三の波』のなかで語った脱産業社会が、いままさに情報通信革命により進行し、そのインフラとなるCPUやストレージ、ネットワークといったIT技術が、“指数関数的に”性能向上を続けている状況に触れ、同社が4年前から展開する「NTT DATA Technology Foresight」という取り組みを紹介した。

 「その取り組みのなかでNTTデータでは、Webや書籍、論文、あるいは有識者へのインタビューなどをベースとした外部環境分析により、最新の『情報社会トレンド』と『技術トレンド』を年1回のペースでレポートしています」と岩本氏は説明。例えば2015年版のレポートでは、58の社会的課題と237の技術課題を抽出。そこから「個の影響力拡大」や「オープンな共創・連携の加速」など4つの情報社会トレンドと、「クラウド超競争時代」や「3D文化の拡大」「生命や感情の科学」「人工知能への挑戦」をはじめとする8つの技術トレンドが導出している。「こうした我々の発信する近未来の予測が業務の現場で生かされることで、社会を変革するイノベーションに貢献していければと考えています」と岩本氏は語る。


日本電気株式会社
代表取締役 執行役員社長
遠藤 信博氏

 続くNECの遠藤氏は、そのプレゼンの冒頭で、NECがいま「人と地球にやさしい情報社会」の実現に向けたビジョンを基軸に事業を展開していることを紹介。人口問題、都市化の問題、食料問題、エネルギー問題など、我々が地球規模で直面するさまざまな課題の解消に寄与する社会ソリューションの提供に注力している旨を強調した。

 「日本の状況を見ても、35年後には人口が現在の60%程度にまで減少すると予測されています。このことは、現状のインフラを60%の人口で支えていかなければならないということにほかなりません。そうしたなかで、インフラのなかに、いかに効率性や安全性といったものを作り込んでいくかが重要な課題となるわけです」と遠藤氏は語る。

 こうした側面も含めてNECでは、「地球との共生」「安心・安全な都市・行政基盤」「枠を超えた多様な働き方」「個々人が躍動する豊かで公平な社会」など7つの領域における社会価値の創造を具体的なテーマとして掲げている。「これらのテーマに向け生かされるべきICTの特性として我々が捉えているのが『リアルタイム性』『ダイナミック性』『リモート性』。NECでは、クラウドやビッグデータ、IoT(Internet of Things)、SDN(Software Defined Network)といった要素技術にかかわる自社のアセットを最大限に活用し、取り組みを進化させていきたいと考えています」と遠藤氏は強調する。

ソリューション提供に向けては各社の協業、エコシステム構築が必須


伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
代表取締役社長
菊地 哲氏

 3番目にプレゼンを行ったCTCの菊地氏も、2050年には日本の人口が2010年のピーク時に比べて、現在の東京、神奈川、大阪という大都市圏の人口に相当する3,100万人という規模で減少するという予測に触れ、そうしたなかでITの果たすべき役割がさらに重要性を増していくことを強調。「そのような問題の克服に向けて、高齢化社会のいわば“先進国”である日本が、今後、作り上げていくIT技術は、その後に高齢化社会を迎える米国や中国、インドといった国々にも輸出され、広く役立てられていくと考えます」と菊地氏は語る。

 そうした状況にあって、企業のコンピューティングの世界においては、電力などの社会インフラと同様のユーティリティ化が進んでいくことが必然であり、日本企業のシステムは、早晩、完全にクラウド化するものと考えられるという。「それに向けCTCでは、性能面や信頼性、セキュリティ、コンプライアンスなどの観点で、お客様に安心してご利用いただけるクラウドインフラの提供に向け、さらに取り組みを強化しているところです」と菊地氏は紹介する。


富士通株式会社
代表取締役社長
山本 正已氏

 4社の最後にプレゼンを行った富士通の山本氏は、世界が抱える課題を解消し、豊かな未来に寄与するITを用いたイノベーションを加速させていくことが必要だという各社と共通した状況認識に立ち、自社の「Human Centric Intelligent Society」というビジョンを紹介した。

 「その一環として富士通では、ビジネスイノベーション、ソーシャルイノベーションという2つの領域でクラウドを核としたソリューションの提供を進めています」と山本氏は説明。とくに今後国内で切実な課題となる医療の問題や、食料問題への対応にも注力していることを説明した。具体的には、すでにますます要請が高まっている地域医療連携や遠隔医療への対応、さらには従事者が高齢化する農業の支援にかかわるソリューションを、クラウドをベースに提供していこうとしているという。

 「とはいえ、そうした対応がすべて富士通1社の力で実現できるとは考えていません。オラクルをはじめ、さまざまな企業との協業に基づいて、各社が提供する技術をインテグレーションしていくことこそが重要であると考えています」と山本氏は強調する。

 セッションの最後に杉原は、参集した各社のトップに対し、いま社会が直面する課題や企業のビジネス上の課題を解消するうえで重要なカギを握るクラウドの分野でのさらなるパートナーシップの強化、エコシステムの構築を提言。各社のトップもそれに快く応じた。

 “デジタル・ディスラプション”による新たな産業革命の波が押し寄せるなか、企業が時代を勝ち抜いていくための変革に必要なのは、クラウドを基盤としたモダンなITの活用にほかならない。オラクルは、それに向けた企業の取り組みを支援する領域で、ますますそのプレゼンスを高めていくことになる。

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