“モノのインターネット”入門~この新しく破壊的技術に関する課題と可能性について~

 アナリストらの予想によると、2020年には500億以上のデバイスがインターネットに接続され、1日あたり数ゼタバイト(ZB)のデータを生成するようになるという。これが、「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」と呼ばれる現象だ。オラクル・コーポレーションのJava製品管理担当バイスプレジデント ピーター・ウッツシュナイダーに、IoTの課題、可能性、開発について聞いた。

―― まず、IoTとは何ですか。また、IoTとM2M(Machine to Machine)はどのような関係にあるのですか。


オラクル・コーポレーション
Java製品管理担当バイスプレジデント
ピーター・ウッツシュナイダー

ウッツシュナイダー IoTとは、IT業界に押し寄せている新たなイノベーションの潮流を表す言葉です。これまでは、おもに人間がインターネットに接続するという考え方でしたが、IoTはその次のステップで、“モノ”もインターネットに接続し、モノとモノがつながるという考え方です。またM2Mは、IoTの一部で、機器間通信を表す言葉です。

―― IoTが広がりさまざまなデバイスから膨大なデータが生成されるようになると、どのような課題が生じると思われますか。

ウッツシュナイダー まずはインフラ面の課題です。あらゆるデバイスが接続されることになるので、接続先のネットワークは新たな負荷に耐えられなくてはなりません。各デバイスは、1つひとつの価値こそ低いものの、大容量のデータを大量に生成するからです。

 デバイスのなかには生成するデータが小さなものもありますが、数は膨大になります。IT業界は、こうした桁違いのビッグデータに対応し、それらデバイスから経由するゲートウェイ、エンタープライズ・システムに至るまで、全体を通して管理できなくてはなりません。

 こうして取得したデータを、どう利用するかという課題もあります。これに関しては、さらなる成長とイノベーション、データを活用した新たなアプリケーションやサービスの提供において、手つかずのチャンスが広がっています。

―― アプリケーション開発者にどのような可能性をもたらすのでしょうか。また、インターネットに接続するデバイスを設計する際は、どのような点を考慮すべきでしょう。

ウッツシュナイダー アプリケーション開発者にとっては、間違いなく世界が変わります。アプリケーション開発というと、まずは人間向けのアプリケーションを想定して、それからデバイスとアプリケーションのやり取りについて考えます。しかし、これからのアプリケーション開発は、超小型のデバイス上で動くコードから始まることになります。そうしたコードができあがってからアプリケーション開発をサーバー側に拡大し、デバイスを取り込めるようにしていくのです。こうして、多様かつ無限ともいえる新たな可能性が広がるのです。

 多くのアプリケーション開発者にとって、デバイス向けの開発はこれまでとは違う領域となることは間違いありません。こうしたデバイスはリソースに制約があります。メモリの容量が小さい場合もありますし、人が操作してオプションを選択したり、ボタンをクリックしてアップグレードしたりといったこともありません。現場に設置されるデバイスも多く、いったん設置したら10~15年は誰にも触れられないケースもあります。こうしたことから、開発者は新たな組み込み開発のスタイルへ移行し、その手法を採り入れていくことになるでしょう。

 一方サーバー側では、こうした新しいデバイスをクライアントとして既存のインフラに統合されることに加え、新しいアプリケーションを開発する際には、そうした“モノ”から取得したデータも統合する必要があります。オラクルは、これまで長年にわたり多種多様なデバイスで利用されてきたJavaプラットフォームの進化と拡張を進めており、IoTも念頭に置いています。Javaで開発したコードは、超小型から超大型まで、あらゆるデバイスで動作します。オラクルは、できる限り容易に、Java開発者がスキルをそのままIoTの開発にも活かせるような取組みを進めています。

―― JavaはIoTの標準プラットフォームとなりつつあるのですか。

ウッツシュナイダー さまざまな指標から見て、JavaはIoTの基盤に採り入れられつつあると考えています。IT業界が現在直面している課題として、デバイスに依存した従来の開発によって、それぞれが断絶しているという点があります。ほとんどの場合、まずはデバイスに載せるコンポーネントを選択し、そのためのソフトウェアをネイティブコードで作成していました。そのため、同様のアプリケーションを開発する場合のコードの互換性や再利用については十分に考慮されませんでした。一方“write once, run anywhere”という歴史をもつJavaであれば、開発に素早く着手し、異なるデバイスでもコードを再利用できます。これは開発者にとっても業界にとっても魅力です。

―― IoT、ビッグデータ、クラウドの一体化についてはどう考えていますか。

ウッツシュナイダー IT業界では、クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モバイル、IoTのそれぞれに関して、いくつかの大規模な開発が進行中です。こうしたトレンドすべてを同時に活用できるようにするためには、業界全体での統合と調整のための膨大な取組みが必要になるはずです。

 モバイルで考えてみましょう。スマートフォンやタブレット端末はその進化によって、ネット通販やソーシャル系アプリケーションを簡単に利用できるようになりました。IoTと組み合わせれば、さらにその用途が劇的に広がります。ユーザーの物理環境に接続、制御するための究極のリモコンとして使えるようになるのです。たとえばホームオートメーションと組み合わせると、外出中に自宅の照明や警報装置をオン/オフしたり、電力消費量を確認したり、エンターテインメント機器を制御したりできます。

 クラウドもIoTを実現するための技術となります。多くの企業では、デバイスの増加によって生成される膨大なデータに、既存のインフラやバックエンドシステムの拡張で対応することには限界があり、インフラの構成を考え直す必要に迫られます。その実現のために、クラウド・サービス・プロバイダーの力を借りることになります。

―― IoT向けの新たな市場は、ホームオートメーション以外に何がありますか。

ウッツシュナイダー IoTは、すべてのビジネスに変化をもたらします。医療分野では早い段階から採用され、生体情報モニタのような医療機器や、在宅医療、遠隔医療などに採り入れられています。

 もう1つの大きな分野はテレマティクスです。すでに自動車メーカーは、自動車にインターネット接続機能を搭載し、離れた場所から車のモニタリングやサポートをおこなえるようにしつつあります。また、実際に走っている車の実地データを集めて、今後の設計やイノベーションに活かすこともできます。

 テレマティクスは業務用車両の管理やロジスティクスにも活用できます。たとえば、配送トラックを管理して効率的に走行できるようにするなどです。あるいは、レンタカー会社が車の中で受けられるサービスや情報を提供し、ホテルやディナーの予約をおこなえるようにすることもできます。

 製造業のオートメーション分野での利用も考えられます。とくに、生産やプロセスのオートメーションです。工場で稼動している製造装置から取得するデータを増やし、製造現場の状況をより的確に把握できるようになります。

―― オラクルはIoTに関して、Java以外にどのような取組みをしていますか。

ウッツシュナイダー センサーからデバイス、データセンター、アプリケーションに至る、包括的なデータ管理と分析を可能にするソリューションを提供しています。オラクルのエンタープライズ・ソリューションは、IoTに特化した多彩なデータ管理機能を備えています。またビッグデータ・ソリューションは、膨大なM2MのデータをOracle ExadataやOracle Database Applianceに格納し、最小限のコストで最大のパフォーマンスを得ることができます。格納されたデータは、Oracle Business Intelligence、Oracle Exalytics、Oracle Event Processing、さらにオラクルのビジネスアプリケーションや業種別アプリケーションを通じて、リアルタイムで把握することができます。オラクルは、こうした大量のデータに対応する多彩なバックエンドインフラを提供しているだけでなく、データがシステムのバックエンドに届く前に、高度なフィルタリングや管理、変換といった処理をおこなうようなインテリジェントな対応を、新たなエッジデバイスの世界でも可能にするさまざまなテクノロジーを用意しています。こうしたデータは、ビジネスに計り知れない大きな価値をもたらします。

 オラクルのIoTのプラットフォームは、デバイスのライフサイクル管理やデバイス上のアプリケーションのセキュリティなど、デバイス側のあらゆる面を考慮していることに加え、それらをバックエンドのインフラと連携し、既存のインフラへの投資を活かしながら拡張できるようにしています。オラクルは、バックエンド側でこれまで積み重ねてきた歴史と技術を、デバイス側で進めているさまざまな取組みと組み合わせることで、IoTがもたらすであろう、とてつもなく大きな可能性の先のイノベーションを実現する、絶好のポジションにいるのです。

―― オラクルのIoT戦略は、ユーザーやパートナー、とくにデバイスメーカー、ソリューション・プロバイダー、サービス・プロバイダーにとって、どのような意味があるのでしょうか。

ウッツシュナイダー オラクルは包括的な視点でIoTをとらえ、バリューチェーンにかかわる多くの、そしてさまざまな企業と密に連携しています。それは、IoTのモジュールで使われるチップの設計や製造をおこなうメーカーから、デバイスメーカー、ソリューション・プロバイダー、システム・インテグレーター、サービス・プロバイダー、ユーザー企業に及びます。オラクルは、バリューチェーンのすべての部分に投資を進める方針です。したがって、たとえばスマートデバイスが市場に登場する際は、そのデバイスはオラクルのサービスに簡単に対応できるようになっているはずです。デバイスがIoTで利用されるためには、よりサービス指向で、長期にわたって進化、新しい価値やサービスを提供できなければならないとオラクルは考えています。当社は、エコシステムやバリューチェーンのすべてのパートナーと密接に連携し、それが可能なデバイスを実現しています。同時に、システム・インテグレーターのパートナーやユーザーとも連携して、こうした各種デバイスに対応できるバックエンドシステムの構築を支援し、IoTに対応した高度なサービスや新しいアプリケーションを開発できるようにサポートしています。

 こうした取組みによって、IoTのバリューチェーンにかかわるすべての企業がビジネスの可能性を広げ、コストを削減できるはずです。この包括的なアプローチは、勝敗を分ける、きわめて強力な鍵になると考えています。

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