【ワコール】国内システムのプライベートクラウド統合でITコスト削減とガバナンスの確立を実現


国内システムのプライベートクラウド統合でITコスト削減とガバナンスの確立を実現

婦人向けのファンデーション、インナーウェアを中心に、アウターウェア、スポーツウェアなどの、繊維製品、および関連製品の製造、販売をおこなう株式会社ワコール(以下、ワコール)は、国内外の事業拡大を目的に、これまで部門最適で導入されてきた業務システムを全体最適化することを決定し、クラウド化を進めてきた。今回データベース統合のためのプラットフォームとして同社が選んだのは、「Oracle Exadata Database Machine(以下、Oracle Exadata)」だった。

 ワコールは、「世の女性に美しくなってもらうことによって広く社会に寄与する」という企業理念に基づき、婦人向けのファンデーション、ランジェリー、ナイトウェア、およびリトルインナーなどのインナーウェアを中心に、アウターウェア、スポーツウェアなどの繊維製品、関連製品の製造、販売を事業として展開している。


株式会社ワコール
執行役員
情報システム部 部長
尾内 啓男

 子会社56社、および関連会社10社により、日本市場はもちろん、中国を中心としたアジア・オセアニア、欧州、米国のグローバルな市場にビジネスを拡大。世界のワコールを目指している。また日本市場では、オールチャネル、オールターゲットの戦略をさらに強化し、顧客接点を増やすことを目指している。

 同社 執行役員 情報システム部 部長の尾内 啓男氏は、「シニア世代向けの商品やブラジャーを着け始める若い世代向けの商品の充実に取り組んでいます。これまでは、高価格帯の製品に強みをもっていましたが、今後は中価格帯の製品も強化していきます。そのためには、業務の効率化が重要で、ITに求められる要求レベルも高くなっています」と話す。

データベース・サーバーの乱立で管理が煩雑に

 ワコールの基幹システムは、メインフレームで稼動する業務システムとオープン系システムで稼動する業務システム、計50種類以上で構成されていた。オープン系システムではほぼすべてにOracleデータベースが採用され、大規模なシステムはUNIXベースで、中小規模のシステムはWindowsベースで構築されている。

 これまでは部門最適で業務システムが構築されてきたためデータベース・サーバーが乱立することになり、運用・管理がきわめて煩雑になっていた。クラウド化は10年ほど前から進められてきたが、基幹システムが稼動するオープン系システムのサーバー・プラットフォームが契約更改のタイミングになったことから、新たなプラットフォームの選定が必要であり、この機会にデータベース・サーバーの統合によるコスト削減を検討することになった。

 ワコールでは、百貨店やチェーンストアの売り場にワコール専用のPOS端末を設置して在庫や売上げなどのデータを収集し、さまざまな切り口で分析していた。このPOS分析用のデータを作成するための夜間バッチ処理が翌朝までに終わらないことがあり、夜間バッチ処理の高速化が急務だった。

 さらに、メインフレームで管理されている「単品データ」と呼ばれる取引の最小単位のデータをオープン系システムに移行することも必要だった。メインフレームをオープン系システムに移行することで、ほかのオープン系システムのデータと組み合わせることが可能になり、これまで以上にさまざまな切り口でデータを分析できるようになる。


株式会社ワコール
情報システム部
グループ情報システム課 課長
大西 輝昌

 情報システム部 グループ情報システム課 課長の大西 輝昌氏は、「メインフレームは、ディスク容量が限られているため短期間のデータしか保有できず、残りはテープで保管しなければなりませんでした。そのため必要に応じてテープからディスクへとデータを戻さなければならず、データ分析を容易におこなうことができませんでした」と話す。

 また国内グループ会社の業務システムは各社で運用管理されており、これらのシステムを統合することも必要だった。これらの条件をすべて満たし、30システム以上のデータベースを統合できるプラットフォームとして採用されたのが、Oracle Exadataだった。

3年かけてOracle Exadataにデータベースを統合

 ワコールでは、2012年末にOracle Exadataのクォーターラックの導入を決定し、2013年春にOracle Exadataを導入。統合データベースの構築を開始した。また2013年末より、メインフレームで稼動していたコードデータ管理の仕組みをOracle Exadataに移行。2014年1月に、Oracle E-Business Suite(以下、Oracle EBS)の会計モジュールをOracle Exadataに移行した。

 さらに2014年末までに、UNIXベースで稼動している大規模システムをOracle Exadataに移行することでデータベース全体の70~80%を統合。2016年中にWindowsベースで稼動している中小システムの移行を完了する計画だという。Oracle Exadataでは4つのインスタンスで、統合本番環境、統合開発環境、パッケージ本番環境、パッケージ開発環境がそれぞれ稼動している。

 大西氏は、「Oracle Exadataの導入開始から完了まで、全体で3年程度のプロジェクトになります。これだけ長期に及ぶのは、単純なシステム移行ではなく、アプリケーションを更改しながらOracle Exadataへの移行作業を実施しているためです」と話す。

 Oracle Exadataへの移行に合わせて、ワコールで独自に開発した共通ミドルウェアに各アプリケーションを適合させる作業をおこなっていることも背景の1つ。大西氏は、「メインフレームのアウトプットは紙の帳票ですが、さまざまなデバイスを使ってデータを活用したいという要望があり、こうした要望にも応えなければなりませんでした」と話している。

夜間バッチの処理時間を半分以下に

 Oracle Exadataを導入したことで、これまで経理業務でもっとも時間のかかっていた売上げデータを夜間に仕分けするバッチ処理の時間は半分以下に短縮された。また、経理システムでは、平均でも30~40%の時間短縮を実現している。大西氏は、「データベース処理だけの時間であればもっと効果は出ていると思います」と話す。

 一方経理担当者や経営層は、汎用検索ツールのスピードがきわめて速くなったと高く評価している。以前は、1年分のデータを検索すると検索結果が返ってこないため、3カ月ごとに区切って4回検索をして、レポートをまとめていた。Oracle Exadataを導入したことで、1年分のデータを一度に検索できるので、業務効率が大幅に向上した。

 大西氏は、「残高や売上げの状況を検索するために経理部門の管理者クラスや経営層も汎用検索ツールを利用しているのですが、検索が速くなったととても好評です。検索処理の高速化は、期待どおりの効果でした」と話す。

 コスト効果としては、2014年度に主要なシステムが統合され、2015年度からはOracle Exadata中心の運用管理となり、TCO(総保有コスト)の大幅な削減が可能。2016年度には初期投資額も回収し、よりいっそうのコスト削減効果が期待できる。

グループ会社も含めてプライベートクラウドに統合


株式会社ワコール
情報システム部
グループ情報システム課
藪下 孝一

 Oracle Exadataの導入は、プライベートクラウドによる国内グループ会社のシステム統合が重要なポイントであり、これにより全社的なITコストの削減やガバナンスの確立などが期待できる。情報システム部 グループ情報システム課の藪下 孝一氏は、「監査の効率化、時間短縮がOracle Exadataを導入した効果の1つです。プライベートクラウド環境でデータベースを統合することで、レベルアップしたセキュリティで標準化され、ITガバナンスがきわめて利かせやすくなりました」と話す。

 これまでのシステム構築は、一戸建てのシステム構築であり、部門ごとに土地を購入して家を建てるイメージだった。一方Oracle Exadataは、“一棟買いの賃貸マンション”である。会社でマンション(Oracle Exadata)を購入し、グループ会社は2階の部屋に、経理は3階に、物流は4階にと、各部屋にシステムを割り当てることができる。

 「マンションの規約にあたるルールを作り、ルールを守ってOracle Exadataを利用します。一戸建ては、それなりに自由が利くためどうしても個別の建築基準・個別の入居ルールになりがちですが、マンションであれば間取りや広さによってタイプはいくつかあるものの、入居規約はすべて統一することができます。このことにより、ITガバナンスを効果的に利かせることができます。グループ会社が入ることで、さらに効果は大きくなります。経営トップには、Oracle Exadataによるプライベートクラウドという名前は覚えてもらえませんでしたが、“一棟買いの賃貸マンション”という名前は覚えてもらえました」(尾内氏)。

 尾内氏は、「ワコール本体だけでなく、グループ会社も含めてOracle Exadataでデータベースを統合することで、コスト削減の効果やITガバナンスの効果が期待できます。グループ全体で利用するプライベートクラウドのIT基盤として、Oracle Exadataの役割は、いまやとても大きなものになっています」と話している。

Oracle Exadataを本番用と開発検証用に分離

 Oracle Exadataには、30以上のシステムが統合されるため、Oracleデータベースをバージョンアップする場合には、1年程度の期間がかかることが予想される。この際日々の業務をおこないながら新環境を検証しなければならず、その期間は新旧2つのバージョンを並行稼動させなければならない。そこで今後、開発検証用の環境を本番環境とは別にすることを検討している。

 大西氏は、「現状では性能面での問題はありませんが、今後さまざまなデータベースを統合していくにあたり、いかに性能チューニングをおこなっていくかが重要なポイントになります。そのためのノウハウの蓄積が必要であり、オラクルからこれまでどおり、Oracle Exadataに関する情報がタイムリーに提供されることを期待しています」と話している。

P R O F I L E

株式会社ワコール
業  種:繊維製品製造業
従業員数:5,003人(2014年3月31日現在 単体)、20,303人(2014年3月31日現在 連結)
資本金 :132億6,000万円
売上高 :1,937億8,100万円(2014年3月期 連結)
おもな事業内容:京都市に本拠を置く1946年創業の衣料品メーカー。子会社56社、および関連会社10社で構成され、インナーウェア(おもに婦人のファンデーション、ランジェリー、ナイトウェア、およびリトルインナー)、アウターウェア、スポーツウェア、そのほかの繊維製品、および関連製品の製造、卸売販売、および一部製品の消費者への直接販売をおもな事業としている。創業以来、「女性に美しくなってもらう」こと、「女性が美しくなることをお手伝いする」こと、「女性の“美しくありたい”という願いの実現に役立つ」ことを目的としている。

本事例の内容は2014年5月のものです

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