【楽天証券】Oracle Exadataによるデータベース基盤の刷新で拡張性が高く“サクサク動く”システムを実現



Oracle Exadataによるデータベース基盤の刷新で拡張性が高く“サクサク動く”システムを実現

楽天証券株式会社(以下、楽天証券)は、2011年3月にOracle Exadata Database Machine V2(以下、Oracle Exadata V2)による基幹データベース基盤の再構築を実施したが、“アベノミクス”による規制緩和を背景に、顧客数、取引量が想定を上回るペースで増大。これに対し同社は、データベース基盤のOracle Exadata Database Machine X3(以下、Oracle Exadata X3)へのリプレースを中心としたシステム刷新をおこない、さらなる市場拡大にも柔軟に対応できる性能と可用性を備えたシステム基盤を整備した。

顧客、取引量の予想外の増大でシステムが限界を迎える懸念

 日本最大級のインターネット・ショッピングモールを運営する楽天グループにあって、ネット証券サービスを提供する楽天証券。国内・海外株式、信用取引、投資信託のほか、外貨建てMMFやFX、海外ETFなどのグローバル投資商品など、業界屈指の充実した商品ラインアップと先進的なサービスによって顧客から高い支持を得ており、現在、取引口座は170万を誇る。

 同社では2011年に、オンライン取引の拡大に伴うトランザクション量の急激な増大に対応し得るシステムの性能と安定性の強化を念頭に、Oracle Exadata V2の導入による基幹データベース基盤の再構築をおこなった。その結果、提供するサービスの品質や運用管理性の向上など、多大な成果が得られた。

 「基幹データベース基盤を含むシステムは、当時の取引量拡大を前提に、将来的なトランザクションの増大にも対応すべく、データベース・サーバー計8ノードを用意し、当初はそのうち5ノードを本番稼動させ、残り3ノードを拡張用の予備とするなどの準備を施していました。最低5年間はこのシステムで乗り切れるものと想定していました」と楽天証券 常務執行役員 情報システム本部長の平山 忍氏は振り返る。


楽天証券株式会社
常務執行役員
情報システム本部長
平山 忍

 しかし、その後の顧客の増加、取引量拡大のペースは同社の想定を大きく上回るものだった。その背景には、2012年12月に第二次安倍晋三内閣が発足し、政府・日銀がデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた積極的な金融緩和、いわゆる“アベノミクス”がある。一連の施策を実施するなかで株式市場が大きく活性化し、楽天証券でも口座数、取引量ともに増大の一途をたどった。

 スマートフォンの急速な普及も、そうした動向に拍車をかけた。2011年当時は限定的だったスマートフォンでの取引が一般化し、1口座あたりのアクセス数が飛躍的に増大。あわせて顧客以外からもリアルタイムな株価情報の参照に同社サイトが利用されるケースも増え、システムにかかる負荷がますます高まっていた。

 こうした状況により、システムのキャパシティが思いの外早い段階で限界を迎えるであろうことが予想された。

システム障害の発生を契機に抜本的対策の検討を迫られる

 楽天証券では、そうした状況に対応し得る新たなシステムの姿の検討を開始することになる。「到達したのは、何よりも“サクサク動く”システムを目指すことでした。システムの性能、安定性を高めることで、より高いユーザーエクスペリエンスをお客様に提供する。それこそが、ネット専業の証券会社である当社の競争力の源泉になり得るものです」と平山氏は語る。

 この段階で同社が具体的なシステムのリニューアルを進めようとしていたわけではなかったが、2013年4月と5月に、アベノミクスによる取引量の急拡大で、ログインや注文の処理に時間がかかってしまう状況が発生する。

 こうした事態を受け、楽天証券は同様の問題の再発を回避するための抜本的対策を迫られることになる。あわせて、来る2014年1月には少額投資非課税制度のNISAがスタートすることが決定しており、いっそうの口座の増加、取引量の拡大が予想される状況でもあった。

 「そこで、かねて我々が思い描いていた“サクサク動く”システムの実現に向けた取組みを、“待ったなし”で進めることになったわけです。解決策として障害対応中の会議で日本オラクルのコンサルティングサービスから提案されたのが、既存の基幹データベース基盤のOracle Exadata V2を、Oracle Exadata X3へリプレースすることでした。当社のようなネット証券にとってシステムはとても重要なものですから、今回の刷新は提案を受けてから代表取締役社長の楠 雄治が数日のうちにOracle Exadata X3の導入を決定し、経営層から了解を得ました」と平山氏は語る。

ハードウェアのリプレースに絞り情報システム部主体で移行を実施


楽天証券株式会社
情報システム本部
プロジェクト推進部長
工藤 聖一

 検討に検討を重ね、年内にチャネルサーバーの更改、5月のゴールデンウィークにOracle Exadata X3リリース、7月にOMSサーバーの更改と決めた。

 「新システムの構築に向けては、取引量増大に向けたシステムの性能、可用性の向上に加え、対応可能な口座数についてのキャパシティ増強もあわせて検討しました。具体的には、それまでシステム的に3部店、180万口座という上限があったのですが、近くそこに達することが見えてきている状況もあり、リニューアルのタイミングでそれを5部店分、300万口座にまで増やすことにしました」と楽天証券 情報システム本部 プロジェクト推進部長の工藤 聖一氏は語る。

 さらに、基幹データベースシステムの強化だけでは、フロント業務を支えるアプリケーション基盤がボトルネックとなる懸念もあることから、旧来その部分を支えていたサーバーをSPARC T5-2サーバーにリプレースするとともに、仮想化によるサーバーの集約をおこなうことにした。加えて、可用性向上の観点から、Oracle Exadata X3のバックアップストレージ基盤としてOracle ZFS Storage ZS3-4の新規導入も決めた。

 プロジェクトでは、新システムの移行に伴う設計・構築・テストを、同社の情報システム部が主体となって実施することにした。これに関し工藤氏は「求められるスピード感を最重要視して今回はあくまでも性能、可用性の強化にポイントを絞り、アプリケーションの改修やサービスの追加はおこなわず、基本的にハードウェアのリプレースのみをおこなう方針を固めました」と説明する。


楽天証券株式会社
情報システム本部
システム開発部長
久米川 昌弘

 実施されたプロジェクトでは、リスク回避の観点から新旧のシステムを並行稼動させ、段階的に移行を進めていくアプローチを採用した。まず新システムのハードウェアを2週間稼動させたのち、比較的口座数の少ない部店を旧システムから新システムに移行。その2週間後に残り2部店分を移行するという流れだ。

 「移行を進めるにあたっては、万一の問題発生に備え、オンライン中であっても10分以内に元のかたちに復帰できるよう、必要なツールや手順の整備もおこなって、リハーサルを重ねるなど万全を期しました」と楽天証券 情報システム本部 システム開発部長の久米川 昌弘氏は明かす。

 こうした工夫や細心の準備もあり、移行プロジェクトはスムーズに推移。予定どおり、2014年5月初旬にOracle Exadata X3を基幹データベース基盤とする新システムへの完全移行が完了した。

約定反映時間が8~10倍に高速化 サービスレベルがさらに向上

 新システムの稼動により、さまざまな領域に、同社の期待をはるかに超える効果がもたらされている。まず、オンライン処理にかかわる性能が劇的に向上した。「たとえば約定反映時間、つまりお客様の発注が取引所に送信され、それが執行されて結果がお客様へ返るまでの時間です。朝9時に取引所が開所した直後、約1万5,000件のトランザクションが走っている状況では、以前は最大遅延が百二十数秒程度でしたが、リプレース後は十数秒程度。総じて8~10倍のレスポンス改善が実現されています」と平山氏は話す。

 バッチ処理の時間も従来の4分の1程度に短縮した。「バッチ処理は商品ごとにおこなわれますが、その処理中は当該商品にかかわるサービスを一時的に停止せざるを得ません。証券市場は1分、1秒の違いが重要ですから、その時間短縮は重要課題の1つです」と工藤氏。新システムによるオンライン処理の高速化、バッチ処理時間の短縮は、顧客へ提供するサービスレベル向上に大きく寄与している。

 フロント・システムに関しては、SPARC T5-2サーバーへのリプレースにより、Oracle Exadata X3によって強化された基幹データベース基盤に追随できる処理性能を実現したという。とくにサーバー集約の実施により、従来約100台稼動していたサーバーを36台に減らすことができた。「その結果、データセンターのサーバー設置スペースが66%に減少しました。消費電力についても30~40%程度削減できるものと予想しています。何よりも、仮想化により、取引拡大に応じて柔軟かつ速やかにシステムをスケールアウトしていけるようになったことは、ボトルネックの回避という点において重要な成果だといえます」と平山氏は強調する。

 Oracle ZFS Storage ZS3-4の導入は、バックアップ処理の大幅な高速化に貢献している。「旧システムでは、テープ装置によるバックアップをおこなっていたこともあり、その処理には2~3時間を要していましたが、現在では二重に取得しながら10分程度で完了するようになっています。将来的には二重で取っているうちの一方を遠隔のセンターに送信することで、ディザスタリカバリなどにも備えていきたいと考えています」と久米川氏は将来的なビジョンについても話す。

24時間365日のサービス提供を目標にさらなるチャレンジを続ける

 今後に向けて、楽天証券では顧客に向けたネット証券サービスのさらなる向上のため、システムのブラッシュアップを継続的に実施していく構えだ。昨今ますますニーズが高まっているスマートフォンへの対応もその1つ。事実、同社に寄せられるスマートフォンからの注文は、現物株取引で30%、先物・オプション取引で50%、FXでは60%にものぼっており、今後、その割合がさらに増していくことは必定だ。これに関し同社では、スマートフォン用の取引アプリケーションの拡充にも注力しており、そのダウンロード数は近く50万件を突破するという。

 「今回の取組みを通じて、我々の思い描く“サクサク動く”システムを具現化し、将来に向けてさらなる拡充を図れる基盤環境を整えることができました。最終的に我々が目指すのは、あくまでも24時間365日の途切れることのないサービス提供です。今後もそうしたゴールを見据え、飽くことのないチャレンジを続けていきたいと考えています」と平山氏は力強く締めくくった。

P R O F I L E

楽天証券株式会社
業  種:証券、商品先物取引業
従業員数:269人(2014年5月31日現在)
資本金 :74億9,500万円
営業収益:457億7,300万円(2014年3月期・連結)
おもな事業内容:1999年6月に日本初のオンライン専業証券としてサービスを開始。現在、約170万の取引口座数を誇る。日本で初めて個人投資家向けにリアルタイムで自動更新する株価の配信トレーディングツール「マーケットスピード」をリリースするなど、楽天グループのネット証券会社として、常に顧客の立場を発想の原点とした質の高い仕事を心がけ、「日本の投資家を元気にする」ことをミッションに、最良かつ革新的な投資サービスの提供に努めている。

本事例の内容は2014年7月のものです

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