【マツダ株式会社】設計・開発用IT基盤をSPARC上へ仮想化統合 PDMツールの性能を2倍向上、運用コスト40%削減


設計・開発用IT基盤をSPARC上へ仮想化統合 PDMツールの性能を2倍向上、運用コスト40%削減

マツダ株式会社(以下、マツダ)は、3次元CAD/CAMやPDMなどのITツールを駆使して自動車を設計・開発する「マツダデジタルイノベーション(MDI)」を1996年に開始。約30台のSPARCサーバーで運用してきた。ところが、MDIの進化に伴う利用形態の変化によって、リソースの配分に起因するさまざまな課題が顕在化。そこで同社は、保守サポート切れを機に25台のサーバーを3台のSPARC T4サーバーに仮想化・統合。自動車設計・開発用のIT基盤は、高性能で低コストなシステムへと生まれ変わった。

マツダ株式会社
ITソリューション本部
エンジニアリングシステム部
CAD/CAMグループ マネージャー
森 泰令

マツダ株式会社
ITソリューション本部
インフラシステム部
技術インフラグループ リーダー
斉藤 昭彦

自動車を設計・開発するためのIT基盤改善へ向けて

 すべてのお客様に「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を提供し続ける――。

 このビジョンの実現に向けて、マツダは新世代技術「SKYACTIV TECHNOLOGY」を定義。エンジン・トランスミッション・プラットフォームといったベース技術を改良したうえで電気デバイスを段階的に導入していくビルディングブロック戦略に基づいて自動車の設計・開発をおこなっている。

 あわせて、企画・生産から販売・マーケティングにいたる、全領域にわたる徹底的な構造改革を推進。エンジニアリング・システムの領域では1996年に「マツダデジタルイノベーション(MDI)」をスタートさせて、3次元CAD(設計支援)/CAM(製造支援)/PDM(製品情報管理)などのITツールで製造力を強化してきた。

 「現在MDIのおもな役割は、自動車という商品の“競合力”を高めることです」と語るのは、マツダ ITソリューション本部 エンジニアリングシステム部 CAD/CAMグループ マネージャーの森 泰令氏。SKYACTIV TECHNOLOGYの開発にも、MDIが最大限に活用されているという。

 しかしそのMDI自体にも、改善は求められていた。「MDIシステムの進化にともなってユーザーの利用形態が変わった結果、リソースの配分と利用効率、パフォーマンス、ランニングコストなどの課題が顕在化してきました」と森氏。ITツールごとにSPARCサーバーを導入していたため、CPUやメモリなどのリソースが足りずパフォーマンスが低下するサーバーがある一方で、使用頻度が低いサーバーではリソースが使用されないことも珍しくなかった。

 また、約30台ものサーバーで構成されていたMDIシステムでは、電気代やシステム運用管理工数などのランニングコストも無視できないほど増大していた。電力消費は温室効果ガスの排出量を左右する要因でもあるため、環境保全に取り組むマツダとしては少しでも削減したかったのである。

リソースの最適・柔軟な配分とランニングコストの削減が目標

 このような課題をかかえながらも運用を続けていた2011年11月。MDIシステムのサーバー群を入れ替えるための検討作業が始まった。翌2012年に迫った保守サポート切れを機に、かかえていた課題を最新の機器で解決しようという目論見である。

 利用部門としての立場からエンジニアリングシステム部がとくに求めたのは、サービスごとの負荷に応じてリソースを適切、かつ柔軟に配分できるようなシステムであること。「リソースをもっとも消費していたのは、PDMツールのTeamcenterが使用していたオラクルのデータベースでした」と森氏。中長期的には、災害やパンデミック(伝染病の大流行)が発生したときにも自動車の設計・開発をストップさせない強靱さも必要だった。

 一方、エンジニアリングとビジネス(事務系)の両方のIT基盤を管理するインフラシステム部では、コストパフォーマンスの向上とランニングコストの削減を重視していた。マツダITソリューション本部 インフラシステム部 技術インフラグループ リーダーの斉藤 昭彦氏は、「実際に使われていた量と4~5年先を見通した予測をもとに将来の計算量を試算し、それに見合ったスペックを考えました。ランニングコストと消費電力を削減するために、仮想化技術を利用したサーバー統合も目指しました」と語る。

 構成の検討にあたっては、机上でサイジングしたうえで、日本オラクルから借りた検証機を使って実データ(約50億レコード、2TB容量のデータベース)による検証を実施。同社が求める要件を満たすことを確認したうえで導入を決定した。

 入れ替えの対象になったSPARCサーバーは25台。これを、本番系2台、開発保守系1台の合計3台に統合。本番系2台は、相互に障害発生時の縮退運転を可能にし、開発保守系の1台は、将来的には事業継続/災害対策(BC/DR)用途にも運用可能にする。それぞれのスペックは、本番用がSPARC T4 -4(SPARC S3 8コア × 4CPU、メモリ512GB)、および同T4 - 2(SPARC S3 8コア×2CPU、同256GB)、開発保守・BC/DR用が同T4 -2(SPARC S3 8コア × 2CPU、同256GB)である。

 また、以前25台のサーバーで稼動していたミドルウェアやアプリケーションを3台の物理サーバーへと統合するための仮想化技術としては、Oracle VM Server for SPARCが採用された。

 社内の購入手続きは、2012年6月に完了。同7月から8月にかけて、MDIシステムの移行・切り替え作業がおこなわれた。「物理サーバー環境からの移行を自動化する日本オラクルの移行ツールのおかげで、移行作業自体は、休日の2日間で完了しました」と森氏は振り返る。

ピーク時もPDMツールが安定稼動 消費電力は4分の1、ラックは12分の1へ

 MDIシステムのサーバー群を最新のSPARCサーバーで仮想化・統合することによって、同社はさまざまな効果を得ることができた。

 まず、エンジニアリング用のITツール間でCPUやメモリなどのリソースをうまく配分できるようになったこと。森氏は「最大約3,500人のユーザーが使うPDMツールのTeamcenterでは、ピーク時に1時間あたり100万トランザクションが発生します。以前は始業時や終業時にレスポンスが低下することがありましたが、移行後のレスポンス低下はありません。基本のレスポンスタイムも、従来の半分になっています」と語る。

 ランニングコストも大幅に低下した。「サーバーの消費電力は月間31kVAから7kVAへと従来の約4分の1に。ラックの数も、12本だったものが1本で済むようになりました」と斉藤氏。台数が減った結果、毎月のハードウェア保守費とリース費も従来の60%ほどになった。

 このほか、運用管理の現場では、「仮想環境への移行とあわせてSolaris 8からSolaris 10にアップグレードできた」「アプリケーション側の理由でSolaris 8環境を必要としていた業務をSolaris 8 Zoneで新環境に統合できた」「将来のBC/DR対策への準備ができた」ことなどを高く評価しているという。

 最新のITを駆使することで、「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を兼ね備えた自動車を効率的に設計・開発する――。マツダのエンジニアリングシステム部とインフラシステム部はこのミッションの達成に、これからも力を注いでいく。

P R O F I L E

マツダ株式会社
業  種:乗用車・トラックの製造、販売など
従業員数:単体:2万1,747人(出向者を含む)連結:3万8,117人(2011 年3月31日)
資本金:2,589億5,709万6,762円(2012年3月27日現在)
売 上 高:2兆3,257億円(連結ベース、2010年度)
おもな事業概要:乗用車・トラックの製造、販売等を事業とする。現在の企業キャッチフレーズは「ZOOM-ZOOM」。同キャッチフレーズにもとづいて、「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を高次元での両立をイメージした革新的技術の「MAZDA SKYACTIV TECHNOLOGY」を推し進めている。

(本事例の内容は2012年12月のものです)

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