【豊川市】シンクライアントへの刷新によって TCO削減と生産性向上を目指す


シンクライアントへの刷新によってTCO削減と生産性向上を目指す

愛知県の東部に位置する豊川市は名刹「豊川稲荷」で全国的に知られる、歴史と自然の豊かな都市だ。同市は今年市政70周年であり、平成25年11月9日(土)、10日(日)に「ご当地グルメで町おこしの祭典! B-1グランプリin TOYOKAWAが開催される予定になっている。
同市の公立小中学校36校で使用する物品からITシステムまでを幅広く管理する豊川市教育委員会では、オールオラクル構成による仮想デスクトップ基盤(VDI)を整備し、6年間で約2,000台の学校用PCをSun Rayへと置き換える計画だ。これにより、20%のTCO削減、職員の業務効率性、およびセキュリティの向上を実現する。並行して、同市の市役所でも職員用端末としてSun Rayを採用し、約1,100台のリプレースを実施する予定だ。豊川市は今後も、教育や行政の現場のさらなるIT活用と満足度向上を目指していく。

豊川市教育委員会
庶務課
中尾 成利

豊川市教育委員会
庶務課
夏目 晋次

豊川市
企画部 情報システム課
白井 秀和

PCやNASの老朽化で故障対応・管理負荷が増大

 近隣の自治体を吸収合併し、現在の規模へと大きく拡大した豊川市。同市教育委員会では管轄する市内36校の市立小中学校に、段階的に教職員の事務用PCや生徒の教育用PCを導入してきた。全校への配備が完了したのは2008年のことだった。

 それらのPCやNASの管理は豊川市教育委員会の庶務課がおこなっているが、当時の状況を中尾 成利氏は次のように振り返る。「約2,000台のパソコンのほか、各学校に複数台のNAS(全校合計で約80台)を設置していましたが、管理の煩雑さ、庶務課の負担の大きさが課題でした。更新の時期もバラバラなうえ、台数に比例して故障対応も多い。コストを抑えながら運用することはもはや困難でした。多いときには1カ月で5台のNASを修理したこともありました。36校の所在地は広域にわたるため、往復の移動時間を含めて修理に3時間以上かかることもあり、教育委員会庶務課の本来やるべき計画や企画の業務が滞るほどでした」。

 同課の夏目 晋次氏も「効率的な運用と、安全性の確保の両立に苦労していました。先生方とともに、よりよいPCの使い方を検討したり、学校間でのデータ共有やセンターサーバーの設置などを議論したりしていました。しかし予算は現状維持で精一杯だったため、抜本的な改善を必要としていたのです」と説明する。

 豊川市の行政側でも、PCのリプレースにおける負担が課題だった。2011年4月、同市のネットワークやITインフラの担当者が集まって開催された「ネットワーク検討部会」でこうした課題がようやく共有された。「情報システム課では何年も前からシンクライアント化を検討してきましたが、当時のソリューションでは効果に対してコストのほうが高く、断念していました。しかし今回、教育委員会側の課題の解決に最適な方法はシンクライアントなのではないかと考え、提案しました」(豊川市 情報システム課 白井 秀和氏)。

 教育委員会側でも、学校のコンピューター室などでネットワークブート式のシンクライアントを採用しており、シンクライアントの概念や仕組みについてはすでに十分な知識があった。価格がネックだったが、山口県宇部市の導入事例が解決の糸口になった。「さっそく宇部市の担当者に問い合わせました。耐用年数に優れるSun Rayは、長期的に見ると費用対効果が期待できると知ったのです」と白井氏は語る。夏におこなわれた視察を経た夏目氏の感想は「仮想化技術を使用する新しいシンクライアントの方式なら、私たちの課題を改善できる」と、可能性を実感したという。

シンクライアント化によって20%のTCO削減を図る

 豊川市の予算要求は2011年10月。検討は急ピッチでおこなわれた。「新年度予算要求にあたり、次年度は仕組みを変えたいことを説明しました」と中尾氏は説明する。「インフラからの入替えが必要ですので、初期投資は大きくなります。しかし10年をひと区切りとして試算すると、従来どおりのPCとNASの利用と比較して、20%のTCO(総所有コスト)削減が可能だと判明しました。先進的な取組みですが、ほかの自治体ですでに実績はあります。もちろんSun Rayには15年以上の活躍を期待していました」(中尾氏)。また、情報システム課が管理するインフラの更改も翌年に控えていたため、「情報システム課が主導するインフラの更改と、教育委員会が進めるシンクライアント化計画の足並みを揃えることにしました。(白井氏)。

 検討チームではさらに、「シンクライアントならばリモートで操作できるため、校務のデータをUSBメモリに入れて自宅にもち帰るなどの際の紛失リスクはなくなり、セキュリティが向上する」「集中管理なのでPCのリプレースに伴う配備コストを低減できる」などもメリットとして挙げ、シンクライアント化の有効性について説明した。

オールオラクル構成で、他社よりも低コストに

 2011年12月、教育委員会庶務課のある支所に3社が実機デモをおこなった。2012年1月にはさらに絞り込んだ2製品を4校に試験的に配置された。実際に教職員に操作してもらい、現場の感触を確かめた。「ITの活用に関心の強い先生に、実機の感想を伺いました。校内ネットワークに接続できたケースもあり、実際の校務に近い状態でテストしてもらいました。PCで可能なことがすべてシンクライアントでもできるわけではありません。誤解は発生しないか、カードで切り替えるという操作の違いに迷うことはないか、と私たちは心配していましたが、パフォーマンスや操作性に先生方が戸惑うことはほとんどありませんでした」と夏目氏は話す。セキュリティ管理上、「教室には校務のPCを持ち込まない」という運用ポリシーを敷いているが、「シンクライアントならば教室でも仕事ができる。ぜひ導入して欲しい」と歓迎された例もあった。

 実機デモ後、2月中に見積りや仕様を詰め、最終的に端末はSun Rayを、ファイルサーバーとしてSun ZFS Storage Applianceを選定した。「オラクル製品で統一したシステムは、他社製品のシステムと比較して、コストを低く抑えることができました」と白井氏は語る。また、教育委員会と市役所で使う端末すべてをオラクル製品にすることは、他市での事例がほとんど無いが、お互いのハードウェアなどを共有することによってリソースを上手く配分し、利用効率を最大化できます。「加えて、カードを使うメリット、製品の耐久性などを総合的に比較し、Sun Rayを基本仕様とすることを、市の情報政策を総合的に判断する情報政策推進本部に説明、了承のうえ入札をおこないました」(白井氏)。

起動スピードが5分の1に生産性・満足度も向上

 最初に配備されたのは、同市内でも早くから校務用パソコンが活用されており、既存パソコンの更新時期など、シンクライアント・システム導入の条件が合致した4校。「この4校に170台、ほかの学校にも部分的に30台を展開しました。最新システムが導入されるということで先生方は誇りを感じてくださり、協力してくださいました」と夏目氏は話す。配備にあたっては説明会を実施し、「集中管理のメリットがある反面、学校側でソフトウェアを自由にインストールすることはできない」などの運用に関するポリシーの変更を連絡しました。コンピューター教室の使い方なども若干変わるが、難しいシステムではないのだということはすぐに理解していただけました。教員も児童も気軽に使用できたので、スムーズに移行できたといえます」(同氏)。

 老朽化していたPCではMicrosoft Windowsの起動に4〜5分を必要としていた。これもオールオラクルのシンクライアント化によって電源投入から1分以内で仕事ができるようになり、教職員の業務効率が上がったため、満足度は高い。「現場でもっとも仕事が効率化したのは『保健室の先生』です。生徒が1人でも保健室にいれば、PCのある職員室には戻れません。しかしセキュリティ上、保健室にはPCは置けませんでした。シンクライアントなら、カードの取扱いさえ気をつければ、場所を気にせず仕事ができます。これはVDIとSun Rayだからこそできたことです」と中尾氏は、現場でも高い評価を得ていることに触れた。「従来は1カ月近くをかけ、各学校の仕様に合わせて設定したPCを、外部業者に納入してもらっていました。しかしSun Rayならば教育委員会の予備機を私が設定し、カードを発行するだけで完了します。現場の人員増などにも柔軟に対応できるようになりました」(夏目氏)。

 豊川市教育委員会では今後6年かけ、全校合計2,000台のPCをシンクライアント化していく計画だ。並行して行政側でも初年度には116台を導入。段階的にPCと置換え、最終的には約1,100台をシンクライアント化するが、PCでしかできない業務などスポット的なニーズ対策としてPCは残すなど、柔軟な運用を予定している。「行政側でシンクライアントへの置換えが完了すると、年間55万円の電気料金を節約できます。基幹系システム用と情報系用で1人2台以上を使用していた職員も、Sun Rayなら1台で済むため、省スペース化にもつながります」(白井氏)。

 同市は今後も教育や行政の現場でのIT活用推進、満足度向上を追求していく構えだ。

P R O F I L E

豊川市
業  種:パブリックセクター
職員数:2,603人(教職員951人と市役所職員1,652人の合計)2010年現在

オラクル公認パートナーが語る導入のツボ[株式会社アズム]

安全性と利便性を両立したVDI整備を支援。
オールオラクル構成で運用管理コストも抑制


株式会社アズム
代表取締役
岡田 修門

 システムの導入を担当したのは、シンクライアント・システムに豊富な実績とノウハウをもっていた株式会社アズムだ。

 「今回のプロジェクトでは、評価/検証からインフラ部分の設計、構築、運用保守に至るまで当社が一貫して担当させていただきました。豊川市様は、以前からオープン系システムの利用に注力されており、シンクライアントの概念や価値、Sun Rayの機能などについても十分ご理解いただいていたため、導入は比較的円滑におこなわれました。設計段階では、現場ユーザーの細かなニーズを取り込みながら、柔軟な運用が可能なシステムの実現を目指しました」と、株式会社アズム 代表取締役 岡田 修門氏は振り返る。

 「Sun Rayシステムの大きな特徴は、“端末側に何ももっていない”ということ。他社のシンクライアント・システムは『ゼロクライアント』とうたっていながらOSが搭載されている場合がありますが、Sun Rayのリモート端末はOSもハードディスクも汎用アプリケーションも搭載していません。そのため、安全性と利便性を両立した仮想デスクトップ環境を提供することが可能となっています。今回は、オールオラクル構成にすることで、サポートを一元化し、運用管理コストも抑えることができました。高機能なシンクライアント・システムを適切なコストで構築できたと自負しております」(岡田氏)。

(本事例の内容は2013年1月のものです)

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