【京急】基幹系BIの分析時間短縮と精度向上で営業戦略策定における意思決定を迅速化


基幹系BIの分析時間短縮と精度向上で営業戦略策定における意思決定を迅速化

京浜急行電鉄上大岡駅に直結する京急百貨店のビジネスを支えているものの1つが、「京急プレミアポイントカード」だ。このカードから得られる顧客情報や商品・売上情報をもとにしたビジネス施策をより迅速に打つため、同社は基幹系ビジネス・インテリジェンス(BI)システムにOracle Business Intelligence Suite Enterprise Edition Plus(以下、Oracle BIEE)を導入した。最新のデータによる営業戦略の策定が可能になり、計画の精度も向上。策定までの時間も短縮し、迅速な意思決定が実現した。

 株式会社京急百貨店(以下、京急百貨店)は、京浜急行電鉄株式会社(以下、京浜急行電鉄)の100%子会社として、京浜急行電鉄の創業100周年事業の一環で1989年に設立。1996年10月に神奈川県横浜市港南区上大岡再開発地区の百貨店棟に出店して創業開店した。京急線の上大岡駅に直結し、隣接するSC業態のウィング上大岡を含めて、駅立地複合商業施設として展開している。

 同社の基礎的商勢圏は、上大岡駅が属する港南区を中心に、京浜急行電鉄沿線の南区、磯子区、金沢区とし、横浜市営地下鉄のほか京浜急行バスをはじめとした4社60路線のバス交通網が網羅するさらに広い地域もカバーしている。

 首都圏有数の郊外型地域ターミナル駅として発展する上大岡の立地条件を基盤に、顧客を単なる消費購買者ではなく成熟・自立した生活者と定める「生活者本位制百貨店」を目指すことで、食品部門の商品力強化と大型専門店とも協業した店づくりによるワンストップ・ショッピングを提供。それが地域に広く支持され、安定した経営を実現している。

営業戦略の精度を向上し、迅速な意思決定を可能にするBIを

 京急百貨店のビジネスを支えているものの1つに、商圏内の顧客が一家に1枚以上保有しているという「京急プレミアポイントカード」がある。このカードから得られる顧客情報や、商品・売上情報の収集によってさまざまなビジネス施策を打つことができる。従来は「京急百貨店ポイントカード」として独自に発行・運用していたが、2004年に京急グループ内の流通事業であるスーパーマーケットやショッピングセンターのほか、ホテルなどのレジャー・サービス事業、タクシーなどの交通事業が共通して利用する「統合流通システム」を構築し、同時に京急百貨店ポイントカードも京急グループ共通のポイントカードとなった。

 京急百貨店では、京急グループがグループ内で共同利用するシステムにおいてOracleデータベースを導入したのを機に、ポイントカードのデータ活用に利用してきた同社の基幹系BIシステムのパフォーマンスの問題を解決するために、Oracle BIEEを導入した。この結果、ダッシュボードへのデータ抽出と分析作業が大幅に迅速化し、営業戦略の精度向上と策定までの時間が大幅に短縮。迅速な意思決定が可能になった。


株式会社京急百貨店
情報システム部 部長補
生島 義英

 「当時、統合流通システムが備えていた顧客管理機能は、DMを発送するための単純な抽出機能や簡単な商品分析機能しかなく、複数のグループをかけ合わせて関連する購買行動を分析するなどの機能は備えていなかった。このため構築から1年後の2005年に、京浜急行電鉄で導入実績のあったHyperion IntelligenceをBIツールとして活用。京急プレミアポイントの顧客データを活用し、営業部門からの顧客分析リクエストに対応していました」。そう説明するのは、京急百貨店 情報システム部 部長補の生島 義英氏だ。京急百貨店では分析の手段が3つ存在すると生島氏はいう。

 1つ目は基幹系BI。BIツールにより、商品の単品分析やお中元・お歳暮などのギフト商品分析、顧客分析をそれぞれダッシュボード化。深く細かい自由分析が必要な場合に活用する。

 2つ目はMD(マーチャンダイジング)系の商品分析。特定の売り場の商品分析のため、各売り場のマネジャーやバイヤーなどが利用する、データ抽出ツールだ。

 3つ目は標準帳票と呼ばれるシステム。営業売上を、日報・週報・月報・期報・年報・3年報のタームで切った18種類のレポートで構成される。

 「これら3つの分析手法でバランスを取りながら営業や企画部門に情報提供をおこなっています」(生島氏)。


株式会社京急百貨店
営業本部 戦略推進部 営業政策・MD担当
長田 芳

 しかし、従来のBIツールではさまざまな分析が可能な半面、操作には専門知識とノウハウが必要だった。また、パフォーマンスが低く処理に多くの時間がかかるため、実質的には一部の専門家に分析業務が委ねられ、京急百貨店全体の分析をまとめておこなうかたちになっていた。

 その分析業務を一手に担っていたのが、京急百貨店 営業本部 戦略推進部 営業政策・MD担当の長田 芳氏だ。

 「分析や集計の依頼は月平均で20件、政策立案のため年度末にはさらにリクエストが集中します。全館を対象とした明細数の多い分析を始めると、端末を半日~終日専有し、ほかの業務がストップしてしまうため、当時は1件の分析の納期を、2週間前後とお願いしていました。そのため、より処理能力の高いBIが必要とされていたのです」と長田氏は当時の苦労を打ち明ける。

処理スピードやコストパフォーマンスのレベルアップを目指す

 そこで、京急百貨店では2008年頃から第1世代の統合流通システムにおける従来のBIツール活用の現状分析をおこない、2008年9月に京浜急行電鉄側も含めたシステム更新委員会をキックオフした。

 京急グループでは、京浜急行電鉄のグループ戦略室のIT担当が全体のIT戦略を構築し、グループ内の株式会社京急システムが情報システム全体の管理・運用を統括する。今回の京急百貨店のシステム更新委員会では、オラクルパートナーの東芝ソリューション株式会社(以下東芝ソリューション)が構築フェーズで参加した。また、生島氏らの情報システム部では、ユーザー部門へのヒアリングやアンケートを実施して現状のBI活用の問題点を抽出。システム更新の方向性の取りまとめとともに、最適なBI製品候補を比較検討した。そうしたなか、東芝ソリューションが提案したOracle BIEEが有力な候補として浮上したという。

 「2008年の8月と11月に、日本オラクルからOracle BIEEの顧客要件分析機能の説明とデモを実施してもらい、従来のBIツールにはないダッシュボード機能などの内容を確認するなかで、これなら使いこなせるかもしれないと感じました。また、処理スピードの速さや、ユーザー限定で利用する場合のコストパフォーマンスのよさも確認したことで、当社でも本格的なビジネス・インテリジェンスにチャレンジできると確信したのです」(生島氏)。

 2009年9月、京急百貨店は東芝ソリューションを通じて日本オラクルにRFP(提案依頼書)を要請。ちなみに従来のHyperion Intelligenceの後継であるHyperion Interactive Reportingは、現在はOracle BIEEのモジュールとして使用ライセンスが含まれている。

 今回はBIの更改とともに、Oracleデータベースの新規採用も検討され、2010年6月には一足先に基本設計がスタート。翌7月にOracle BIEEとOracleデータベースの採用が正式に決定した。

最新のデータで営業戦略を策定

 2011年9月に、Oracle BIEEを活用した新基幹系BIシステムが本稼動を開始した。導入後の変化について、生島氏は次のように述べる。

 「広くエンドユーザーに向けて情報発信するダッシュボードにより、日にちや商品コードを設定するだけで、迅速にデータを抽出できるようになりました。処理が速く、結果がわかりやすく、かつ簡単に運用できるという印象です」。

 長田氏の業務環境も大きく変化したという。

 「MD系の個別商品分析のBIは処理時間が長く、1件の分析に30分ほどかかりお茶を飲む時間がつくれるほどでした。ところがOracle BIEEは、より複雑な分析にもかかわらず数十秒~1分程度で処理が完了し、お茶の時間もないほどです。短時間で処理できるようになったので、従来のBIツール時代とは比べものにならないほど処理時間が短縮し、分析以外の業務に時間を配分できるようになりました」。

 従来のBIツールはセキュリティ管理機能が不十分だったため、情報システム部内の指定の端末でしか操作ができなかった。このため、長田氏が毎回出向いて作業をおこなっていたが、Oracle BIEEでは自席の端末からでも安全に操作できるため、作業効率が大幅に向上したという。

 「顧客の購買集計において、売り場単位やフロア単位での集計を名寄せし、計算値を変更したりすることもできます。このため、分析回数が削減され、パフォーマンスが向上しました。分析時のストレスも、以前と比べて大きく改善しています」(長田氏)。


株式会社京急百貨店
営業本部 戦略推進部 営業政策・MD担当
マネージャー
宮崎 史康

 そして、京急百貨店 営業本部 戦略推進部 営業政策・MD担当 マネージャーである宮崎 史康氏は、次のように評価する。

 「これまでもさまざまな要素をかけ合わせた分析を長田さんに頼んでいましたが、従来のツールでは時間がかかっていたため、場合によっては鮮度の落ちた出来合いのデータで分析するしかありませんでした。しかしOracle BIEEに変わってからは最新のデータで営業戦略を策定することができ、計画の精度が向上しました。策定までの時間も大幅に短縮し、迅速な意思決定に役立てられています」。

 とくにDM抽出においては、来店回数や売上げの金額などの条件で変化するため、分析のレスポンスが高くなければ効果が上がらない。DM施策を見切り発車にせず、かつ試行錯誤をおこなう余裕も生まれたと宮崎氏は指摘する。

目的志向で顧客の悩みに応えようとするオラクルの姿勢

 京急プレミアポイントは、売上げに対する捕捉率が高いという。それは一方で、巨大なデータが格納されていることを意味し、分析ツールには高いパフォーマンスが求められることになる。Oracle BIEEは、こうした要件を満たすBIだと生島氏は断言する。

 「BI導入でもっとも効果を感じるのは、ダッシュボードです。ダッシュボードで何を見たいのかを明確にすることが仕事の標準化につながります。具体的にダッシュボードで何をアウトプットし、何を標準化すべきか、BIのもっとも得意な部分を活かすべきです。一方、自由分析に関しては、やはり専門知識が必要です。分析そのもののノウハウが必要で、BIを導入しただけで問題が解決するわけではありません。この2つをしっかり認識すれば、Oracle BIEEはきわめて強力なツールになるでしょう」。

 生島氏は今回のプロジェクトを振り返り、「京急システムとしても初めてのBI導入となりました。試行錯誤でおこなわれた面もありましたが、日本オラクルからも直接支援をいただいたことで、BIに関する豊富な知識を得られたことは大きな収穫でした。目的志向で顧客の悩みに積極的に応えようとする姿勢は、ほかのベンダーにはあまり見られない、素晴らしいサポートのかたちだと思います」と評価する。

 横浜市の“副都心”として発展する上大岡に根を下ろし、豊かな生活文化の実現と地域社会への貢献を、常に立ち返るべき原点とする京急百貨店。同社はこれからも、Oracle BIEEによって良質な商品とサービスの提供をおこなっていく考えだ。

P R O F I L E

株式会社京急百貨店
業  種:小売業
従業員数:805名(社員205名、契約社員131名、パート・アルバイト469名)(2013年9月現在)
資本金 :1億円
売上高 :410億円(2013年2月期)※ウィング上大岡含まず
おもな事業内容:京浜急行電鉄株式会社の創業100周年事業の一環として1989年に設立、1996年10月に創業開店した京急線上大岡駅に直結した複合商業施設。首都圏有数の郊外型地域ターミナル駅である上大岡が属する港南区を中心に、沿線の広い地域を基礎的商勢圏としている。地域密着型の「生活者本位制百貨店」を目指し、食品部門の強化と大型専門店との協業によるワンストップ・ショッピングを提供することで、地域に広く支持されている。

本事例は2013年12月のものです

ページの先頭へ