



サントリーは1899年の創業以来100年を超える歴史のなかで、数々のチャレンジをとおして業容を拡大してきた。甘味葡萄酒「赤玉ポートワイン」を生み出して日本の洋酒文化を拓き、日本初のウイスキー事業に着手。ビールや食品・清涼飲料事業にも進出するなどし、現在では飲料の製造販売だけでなく、花、ヘルスケア、外食、スポーツにいたる、幅広い領域で事業を展開している。2009年には純粋持株会社に移行。新体制のもとで、さらなる成長へ向けたさまざまな施策に取り組んでいる。
その1つが、事業の成長を支えるグループIT基盤の再構築だ。事業の成長に伴ってサントリーでは、年率数十%のペースで顧客データが増加。基本的に同社では顧客データを保持し続けているため、システムのチューニングをおこなっても性能を維持することが困難な状況に陥っていた。そこで、グループIT基盤の再構築の一環として、24時間365日稼動する顧客対応システムの基盤刷新が検討に挙げられた。
グループ企業に間接業務サービスを提供するサントリーの機能会社の1つ、サントリービジネスエキスパート株式会社において、グループ全体のIT基盤を統括しているビジネスシステム本部グループ情報システム部 部長、村林 泰之氏はその背景について次のように打ち明けた。
「お客様の数、購買に関するデータ量は年を追うごとに増え続けています。ビジネスの成長に伴って1人のお客様に紐づくデータの種類も増えるため、顧客データは指数関数的に増加していました。この顧客対応システムでは、1日に100万件を超えるトランザクション処理をおこなっていましたが、2010年ごろにはその性能が限界を迎えつつあったのです」。
当然ながら情報システム部ではレスポンスタイムなどの数値を把握していたが、それらは明らかに悪化していた。実際業務ユーザーからも「最近システムのレスポンスが遅い。このままではお客様に対するサービスレベルの維持が困難になるだけでなく、将来的にはビジネスへの影響も懸念される」というような声が情報システム部に寄せられるようになり、次第にその頻度と切迫度が高まっていった。
ITが、ビジネスの成長スピードのブレーキになるわけにはいかない。「パフォーマンス向上のためのさまざまな対策は、これまでも講じてきました。しかし従来どおりのチューニングレベルの方法では、これ以上の改善は難しいと考えました」(村林氏)。今後も加速度的にデータ量が増え続けることが予測されるなか、サントリーは顧客対応システムのデータベース基盤刷新を決断した。
ソリューション選定などの具体的な検討は、2010年の後半から翌2011年初頭にかけておこなわれた。その要件について、サントリーのシステム構築・運用を担う株式会社サンモアテック(以下、サンモアテック)の山門 亮太氏は次のようなポイントを挙げる。「もっとも重視したのはパフォーマンスです。レスポンスタイムを改善し、お客様対応の質を高められるような、高速処理を実現したいと考えました」。
将来にわたって増え続けるデータ量にも、安定的に対応できなければならない。「拡張性、可用性を含めた品質も不可欠な条件でした。顧客対応システムは24時間稼動しています。システムが止まるとお客様に迷惑がかかるだけでなく、売上げに対するマイナスの影響もあります」。短期間で導入できることも重視された。「その頃はレスポンスが大きく低下していて、業務ユーザーの作業にも影響が出始めていたので、とにかく早急に新システムを動かしたいという気持ちがありました」(山門氏)。
顧客対応システムのデータベース基盤に対する経営層の要求について、村林氏はこう表現する。「究極の理想は、『レスポンスタイム・ゼロ』です。蛇口をひねればすぐに水が出るように、必要なときに必要なだけ、常にスムーズにシステムを利用できるようにしてほしい、ということでした」。
いくつかの製品が検討された結果、高い性能を備え、すべての構成があらかじめ最適化されていて短期間で導入できるOracle Exadataが採用された。「パフォーマンスはもちろんですが、柔軟な拡張性、可用性も高く評価しました。また、従来のデータベースはシングル・インスタンス構成で利用していましたが、Oracle Exadataは冗長構成なので安心感があります」と語るのは、サンモアテックの基盤サービス事業部で主任を務める小山 知岐氏だ。
導入プロジェクトのキックオフは2011年9月。SIパートナーとして、Oracleデータベースの構築・運用において豊富なノウハウと経験、実績をもつ新日鉄ソリューションズが参画した。そして2012年2月、予定どおりカットオーバーを迎えた。
新データベース基盤によって、顧客対応システムの性能は大幅に向上した。オンライン処理では、3秒以上かかっていた平均レスポンスタイムが1秒以下になった。プロジェクトの直前、レスポンスに5秒以上かかるケースは10%を超えていたが、この値も0.1%へと劇的に改善。これによって顧客対応システムでの顧客対応率は、5%以上向上したうえ、システム利用時のストレスが大幅に軽減されたことでお客様対応の質も向上した。
一方バッチ処理では、処理速度が最大50倍向上。処理の高速化による効果について村林氏は「バックオフィス系の業務の効率性が向上し、スタッフの残業時間が大幅に削減されたと感謝されました」と語る。朝4時までに倉庫に配送データを送るというクリティカルな処理も、これまではギリギリのタイミングで送っていたのが、万が一のトラブル発生時も対処のための時間をとれるようになったという。
顧客対応システムのデータベース基盤は、今後事業拡大に伴ってデータ量が増えたとしても「少なくとも5年間は耐えられる」と村林氏は見ている。さらなるシステム増強が必要になったとしても、ラックを追加するだけで容易に対応できる柔軟性・拡張性は、国内での収益性向上、海外市場でのビジネス強化の、大きな推進力となることが期待されている。
国内外のマーケットにおける「新たな価値の創造」にチャレンジし続けるサントリー。「システムのせいでビジネスが停滞することがあってはなりません」。ビジネスの成長を支え続けるITへと生まれ変わったデータベース基盤は、村林氏の言葉に象徴されるように、さらに加速しつつあるサントリーの成長をこれからも力強く支えていく。

サントリーグループ
業種:製造・販売
グループ会社:子会社173社、関連会社26社(2011年12月31日現在)
従業員数:2万8,532人(2011年12月31日現在)
連結売上高:1兆8,028億円(2011年)
おもな事業内容:1899年創業。酒類の製造販売に始まり、食品、花、健康食品などの研究開発、および製造販売、フィットネスクラブや多業態飲食店の経営、花苗・鉢花、野菜苗の開発・生産・販売など、多彩な事業を展開する企業グループ。「人と自然と響きあう」を企業理念に掲げ、最高品質の商品・サービスを届けるだけでなく、地球環境保全や地域社会に貢献する活動にも創業時から積極的に取り組んでいる。