【札幌市】汎用機による行政システムをオープン化 “グラスボックス化”、高い信頼性と安定稼動を実現


汎用機による行政システムをオープン化
“グラスボックス化”、高い信頼性と安定稼動を実現

日本第4位の人口規模をもつ北海道札幌市。同市では1962年に給与計算のシステムを導入して以来、約半世紀にわたって行政にコンピュータを活用してきた。1989年のオンライン化に際しては大型汎用機を採用。以来四半世紀にわたり、この大型汎用機が市政を支えてきた。ところが、たび重なる追加開発などによりシステムは複雑化の一途を辿り、次第にブラックボックス化。維持コストも増大していた。そこで同市は、硬直化したシステムの抜本的改革を決断。透明性の高い“グラスボックス”なシステムの実現を目指し、オープン化へと踏み切った。

札幌市
総務局 情報化推進部
情報システム課
システム開発担当係長
小澤 秀弘

札幌市
総務局 情報化推進部
情報システム課
岩間 雅巳

札幌市
総務局 情報化推進部
情報システム課
田中 寛純

札幌市
総務局 情報化推進部
情報システム課
谷口 智

高い透明性、自主コントロールを実現する“グラスボックス”なシステムへ

 およそ半世紀にわたり行政にITを活用してきた札幌市。その近年の状況について、札幌市 総務局 情報化推進部 情報システム課 システム開発担当係長の小澤 秀弘氏は次のように振り返る。「1989年にオンライン化し、住民記録システムが稼動しました。それから24年間、大型汎用機が札幌市の庁内システムを支えてきました」。

 しかし、制度改正のたびに発生する追加開発や修正、少ないコンピュータ・リソースの利用効率を最大化するための細かい処理を繋ぐ設計などで、汎用機システムは複雑化の一途をたどっていた。こうした状況に対し、小澤氏をはじめとする管理の現場では、大きな問題意識をもっていたという。

 「システムを維持するために、このシステムを担当する企業との随意契約が長期化しており、システムのなかもブラックボックス化していました。我々は維持コストの適切化に努めていましたが、コストは公正な比較が難しい状態にあり、システムも変更が困難となっていました」(小澤氏)。

 同課では田中 寛純氏が中心となり、オープン化の有効性についての調査と検討を繰り返した。「他都市のオープン化の状況調査を実施しましたが、システムの安定稼動への不安、運用コストやトラブル対処における人的負荷の増大などの課題があり、コストメリットを得にくいことがわかりました。住民記録システムのようなミッション・クリティカルなシステムをオープン化するには時期尚早と判断しました」と2007年頃の状況について説明する。

 そのため札幌市ではいったん、汎用機の維持を結論づけた。しかし汎用機は、2014年には稼動限界に達することが調査の結果明らかになったのである。

 「システムを抜本的に再構築しなければ、市民サービスが止まってしまうことが判明しました。我々は改めて『何のためにオープン化をするのか』を議論し直しました。その際、産総研(独立行政法人 産業技術総合研究所(AIST)の和泉 憲明氏に『AIST包括フレームワーク』をご紹介いただきました。その結果、単なるコスト削減ではなく、『市職員がコントロールでき、透明性の高いグラスボックス化されたシステムを実現する』『地元企業が参入でき、公正な競争ができる』システムの変革へと、目的を絞り込みました」(小澤氏)

短期導入と安定稼動を両立するエンジニアド・システムズ

 AIST包括フレームワークは、オープンで中立な基盤を確保したうえで、開発活動までを含めた環境全体を提供する。札幌市は、このフレームワークの採用を決断した。

 「産総研本体やほかの政令市での先行事例があり、それらの環境ではOracle DatabaseとOracle WebLogic Serverが利用されていることがわかりました。札幌市のシステムは地方銀行3つ分に匹敵する行数のCOBOLで稼動していましたので、移行の実施のためにチームメンバーはこのフレームワークを使って取り組む覚悟を決めました」(田中氏)。

 同課の谷口 智氏も「このシステムは庁内の職員が使うシステムですので、運用に携わる者は、何のためのシステムなのかを意識する必要があります。方針は事業の根幹です。事業の目的は何かという点に、いつでも立ち返ることができるようにしました」とビジョンの明確化と共有が重要であることを強調する。

 入札では、市が業者にハードウェアを指定することはできない。どのような要件を入札では提示したのかについて、小澤氏は次のように説明する。「機器のスペックだけでなく、2012年7月に改正された『住民基本台帳法』へ対応するために、納入とシステム構築、テスト実施、稼動開始までを改正法の施行までに実現することが必須でした。そのうえで、トータルコストのもっとも安価なご提案を採用しています」。

 一部の業者からはIAサーバーでの構築の提案もあったが、運用までのトータルコストで、Oracle Exadataの競争力が群を抜いていたと小澤氏は振り返る。

 「複数の業者がOracle Exadataを基盤とする構成を提案してきました。我々は常に、開発費や人件費を含めた総コストで検討しています。IAサーバーの場合に生じる相性問題の解決や検証作業といったことに費やすコストがけっして安くはないことからも、ハードウェアとソフトウェアが一体化したエンジニアド・システムズの1つ、Oracle Exadataが今回のような大規模かつ短期、そしてミッション・クリティカルなプロジェクトには最適であることを示しているといえます」(小澤氏)

堅牢で高い安定性を備えたExadataがマルチベンダーによる開発と運用を支える

 ITシステム刷新の事業化にあたり、投資対効果の検証を実施したと田中氏は話す。

 「仮に汎用機を今後も改修しながら維持、運用した場合に必要な総コストと比較すると、Oracle Exadataをインフラとするオープン系へと移行すれば、長期的にはかなり大きなコスト削減効果を見込めると試算しました」(田中氏)。その効果額は、最大で約100億と試算されていたという。実際には廉価なIAサーバーは採用されなかったが、それでも運用まで含めた総コストでは劇的なコスト削減を実現した。

 「オープン化する場合はおのずとマルチベンダー化しますが、基盤やインフラこそ、堅牢で安定性の高いものであることが望ましい。Oracle Exadataはこの役割を確実に果たしています」(小澤氏)。

 また今回の刷新では、開発やテスト、リハーサルをおこなうステージング環境も構築した。「住記システムなどの自治体基幹系システムは市民の権利に関する内容なので、失敗は許されません。細かい制度改正も多く、毎回が新規のような状態です。こうした事情に対し、ステージング環境でテストしたり、何度もリハーサルできることは、行政システムの運用におけるリスク低減に大きく貢献します」(田中氏)。

 同課の岩間 雅巳氏は、「AIST包括フレームワークは疎結合で強固、しかも開かれた仕組みですので、いろいろな技術をもつ開発企業が活躍できます。インフラが統合されているため、サポートもオラクルでのワンストップで安心しています。システム移行プロジェクトはまだ全工程の3分の1の進捗です。2015年に予定している全システム移行完了へ向けて努力していきます」と予定を語る。

 「Oracle Exadataのようなエンジニアド・システムズを導入したことによる効果はきわめて大きいと思います。今後はアプリケーション層とデータベース層の間などで動くものをどう連携させるかの場面でのOracle Exalogicの活躍、非常時に対応するためのOracle DataGuardなどに期待しています」。最後に小澤氏は、今後の展望についてこのように語り、締め括った。

P R O F I L E

札幌市
業 種:パブリックセクター
職員数:1万4,298人(2011年4月1日現在)

(本事例の内容は2012年11月のものです)

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