





みずほ情報総研株式会社(以下、みずほ情報総研)は、株式会社みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)のIT戦略を担うグループ会社である。ITはもちろん、科学技術や環境・エネルギー、社会経済など多様な分野に専門性をもつ約4,500人のプロフェッショナルを擁し、幅広いサービスを提供している。そのサービスの柱は大きく3つ。コンサルティングとシステム・インテグレーション、アウトソーシングの分野において、顧客の企業価値向上をサポートしている。
みずほ情報総研 銀行システムグループ 共通インフラ事業部 第5部 部長の川上 修二氏は、同社の役割を次のように説明する。
「現在、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の統合、ワンバンク化に向けた取組みが進行中で、そのシステム統合において当社は大きな役割を担っています。一方、ネットバンキングの普及に見られるように、近年は金融サービスの利用シーンが多方面に広がっています。変化するお客様のニーズに迅速に対応するためのIT環境づくりは、当社の重要な使命です」。
こうした役割を果たすための取組みとして、同社はグループ共通のIT基盤構築プロジェクトを推進している。いわば、みずほFGにおけるプライベートクラウド構築。このプロジェクトは、2010年に発表された「<みずほ>の『変革』プログラム」を受けてスタートした。
「このプログラムは2010年度から2012年度までの中期基本方針を示したものです。そのなかで、業務インフラの効率化の一環として、IT経費構造の抜本的なスリム化が打ち出されました。こうした方針のもとにさまざまなワーキンググループが立ち上がり、各領域で検討がおこなわれました。ITインフラの集約と共通化はその1つです」と川上氏は振り返る。
ITインフラの共通化がキーワードとして浮上した背景には、従来型ITに対する課題意識があったという。
「大きく2つの課題を感じていました。これまでのサイロ型ITでは、個々のリソースに余裕があっても、それをほかのシステムに融通することができません。もう1つは、標準化が進まないことによる非効率です。システムごとにOSやミドルウェアなどのバージョンが異なっており、それが構築・運用コストの増大につながっていた面があります」(川上氏)。
こうした課題への解決策となるのが、ITインフラの集約と共通化である。みずほグループでは現在、データベースだけでなく、Webアプリケーション基盤なども含めたリソースの共有化に取り組んでいる(下図)。これは、仮想化技術をはじめとするクラウドのテクノロジーを活用して、グループ共通基盤を構築しITの全体最適化を目指すものだ。川上氏らのチームは「5年でTCOの半減」というチャレンジングな目標を掲げ、グループ共通基盤の構築に向けたプロジェクトをスタートさせた。
グループ共通基盤の主要な構成要素はミドルウェア層とサーバー/OS層、ストレージ層の3階層。また、このプロジェクトでは、運用管理やネットワークについても標準化と共通化が進められている。ミドルウェア層においては、共通データベース基盤の構築が主要テーマとなる。
「当グループでは、数百という既存システムでOracleデータベースを使っています。データベースの統合環境をつくることで、大幅なコスト削減が可能と考えました」と川上氏。その実現に向けて、3つの選択肢が検討された。みずほ情報総研 銀行システムグループ 共通インフラ事業部 第5部 チーフシステムエンジニアの坂本 晃浩氏はこう語る。
「3つの選択肢は、IAサーバー上にデータベースを載せる、当社が資産として保有しているUNIXサーバー上に構築する、そしてOracle Exadata Database Machine(以下、Oracle Exadata)の導入。これらの選択肢を、性能と排他性という、おもに2つの観点で検証しました」。
Oracle Exadataの性能評価はUNIXサーバーと比較した場合、データウェアハウス系の処理で最大7倍、一般的なオンライン・トランザクション処理で最大2倍という結果だった。また排他性というのは、多数の業務アプリケーションが載せられたとき、システムトラブルなどが相互に影響しないこと。この2つの観点で高評価を得たことに加え、エンジニアド・システムズ製品ならではのハードウェアとソフトウェアがベストチューニングされた導入のしやすさもポイントだったようだ。
「ハードウェアのセットアップが必要な場合に比べて、セットアップされた状態で納品されるOracle Exadataなら稼動までの期間を4カ月、短縮することができます」(坂本氏)。
Oracle Exadataは本番、バックアップ、開発という3つの環境に導入された。まず、2011年8月にクォーターラックが納品され、2012年7月に本稼動。このタイミングで、クォーターラックを追加してハーフラックへの拡張プロジェクトがスタートした。ハーフラックが動き始めるのは、2013年2~3月の予定だ。つまり現在は、「クォーターラック×3台」から「ハーフラック×3台」に向けた拡張の途上にある。
「従来のOracleデータベースからOracle Exadata上のデータベースへの移行ということもあり、プロジェクトはスムーズに進行しています。以前のシステム構築と比べてデータベースのバージョンを揃えて標準化することができ、そのメリットを実感しています」と川上氏はいう。順調な進行の背景には、オラクルとの密な情報共有もあるという。みずほ情報総研 銀行システムグループ 共通インフラ事業部 第5部 上席課長 青山 奈央氏は次のように語る。
「オラクル側から事前に注意点などの情報提供があり、対処法などの準備ができていたので、さほど大きな問題は発生していません。また、日米のオラクル側責任者と当社側の責任者が出席する3カ月に1度のエグゼクティブミーティングで進捗や課題などに関する情報を共有したほか、現場レベルでも日本オラクル、および当社からリーダーが出席する2週間に1度のミーティングを実施しました」。
Oracle Exadataによって構築された共通基盤に最初に載せられたのが外国債券システムである。外国債券の取引管理、損益・リスク管理、決済管理などをサポートするシステムだ。
「これまでフロント・ミドルとバックとで別々のシステムを使用していましたが、システムの老朽化を機に、両システムを統合したWebシステムを再構築することになりました。その検討が始まったのは2009年ごろです」というのは、みずほ情報総研 銀行システムグループ 市場系システム事業部 第3部 次長の唐崎 和也氏である。
既存のシステムをベースに再構築することが決まったが、そのアプリケーションの土台となるインフラについては別途検討された。選択肢は以下の3つである。ハードウェアやミドルウェアなどを独自に調達し個別構築をおこなう。IAサーバーの共通基盤のみを活用する。ハードウェアを含めたデータベース共通基盤を活用する。議論の結果、ハードウェアを含めたデータベース共通基盤を活用することが決定した。
「当時、共通インフラのチームが基盤の選定をおこなっていました。アプリケーション側では、それがOracle Exadataになるのかどうかは意識せずに、『データベース共通基盤を使う』ということを決めました。もっとも大きな理由はコストです」と、みずほ情報総研 銀行システムグループ 市場系システム事業部 第3部 課長の渡邊 愛子氏は語る。ただし、外国債券を扱う業務の特性上、インフラの性能と可用性については念を押したという。「外国債券のシステムは、夜間の時間帯にも利用されます。システムを止めると業務への影響が大きいので、その点の確認はしました」(渡邉氏)。
可用性については、共通インフラ事業部も細心の注意を払っており、高可用性アーキテクチャOracle Maximum Availability Architecture(MAA)に従った実装をおこなって、高可用性の確保に万全を期している。「計画停止、計画外停止の時間を最小化する。それは共通基盤としての使命です。目指すのは24時間365日のサービス提供です」と話すのは、青山氏である。
実際、外国債券システムが稼動した2012年8月以降、データベース共通基盤のサービスは問題なく提供されているという。また、新システムが動き始めてからは、性能面の効果も実感しているようだ。唐崎氏は「クライアント/サーバーの旧システムとの比較はできませんが、かつてのようなユーザーのストレスはほぼなくなりました」という。
外国債券に続いて、今後はバーゼル3*2対応や円債などのアプリケーションが同じデータベース共通基盤に移行される予定だ。2012年度中に、6システムほどが共通基盤上で稼動することになる。
「多くのシステムが載ることで、集約効果も高まります。コスト削減につながるだけでなく、提供までの期間短縮を通じてビジネススピード向上にも貢献できます。これまでのところ、ほぼねらいどおりの効果を実現できています」と川上氏は語る。
今後みずほFGでは、共通基盤の利用が当たり前になるだろう。それを見越した布石も打っている。その一例が、Oracle Application Testing SuiteとOracle Real Application Testingの導入検討だ。
「共通基盤上で多くのシステムが動くようになれば、共通基盤そのものに変更を加えにくくなりますが、アップデートは欠かせないと私たちは考えています。インフラをアップデートする際は、アプリケーションに影響がないことをユーザーが簡単に確認できる環境が必要です。逆にアプリケーションを改修する際に、問題がないことを確認する必要もあります。そのためのツールとして、Oracle Application Testing SuiteとOracle Real Application Testingを評価しているところです」(青山氏)。
将来的には、本番サイトにOracle Data Guardを構成し最小停止時間でメンテナンスを可能にするローリングメンテナンス環境の整備をおこなう一方、災害対策環境データベースを参照系業務で本番利用してリソース利用効率をさらに高めることを計画している。
順調なスタートを切ったみずほFGのプライベートクラウド。この新しい環境を体感したユーザーの評判は確実にグループ内に伝わっている。それが次のユーザーを呼び込み、今後のさらなる高集積と効率化につながるはずだ。川上氏は「導入したからには、Oracle Exadataを使い倒すつもりです。そして、データベース共通基盤を積極的に拡張していきたいと考えています」と意気込んでいる。
*1 Total Cost of Ownership。コンピュータシステムの導入、維持・管理などにかかる費用の総額
*2 「バーゼル銀行監督委員会」が2010年9月に公表した、国際的に業務を展開している銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制

みずほ情報総研株式会社
業 種:情報サービス業
資本金:16億2,750万円
従業員数:約4,500人
拠 点:国内8拠点、海外(ロンドン)に1拠点(2012年10月現在)
おもな事業内容:みずほフィナンシャルグループにおけるIT戦略を担当。サービスの柱はコンサルティング、システム・インテグレーション、アウトソーシングの3つ。ITにおける強みと多様な専門性を活かして、金融業や一般法人、官公庁、研究開発部門などの顧客のビジネスパートナーとして幅広いソリューションを提供している。